王都披露宴そして"ハルディア"
評価ポイント押してもらってたり、最後に親指グッドとかの数が増えてたり、ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
王都エルディア、蒼翼城の大広間。
金糸のカーテンに光が差し、香の煙がゆらりと揺れる。
音楽、拍手、笑い
全部、まぶしすぎて目が痛い。
「これが“軽い披露宴”……ね」
「胃に重たい宴会の間違いでしょ」
ミーナがグラスを傾けてぼやき、アリアが金色の皿を見て声を上げた。
「ねぇこれ!お肉がキラキラしてるんだけど!?宝石盛り!?」
「食える金粉。消化に悪い贅沢だな」
「もはや罰ゲームね」
ノクスがテーブル下から“にゃっ”と鳴き、完全に同意している。
王都の空気は、笑っていても裏で探り合っている感じだ。
戦場の方がまだ素直だったかもしれない。
⸻
「トリス=レガリオン辺境伯殿」
背後から低い声。振り向けば、宰相オルヴィウス・ハートランド。
白金の杖を持つ痩身の男。笑顔の下の眼差しが鋭い。
「カローネ侯国戦の収束、見事だった。……王都の者どもも驚いておる」
「恐縮です、宰相閣下」
「ふ。そういう丁寧さは敵を油断させるな。だが悪くない」
怖いような褒め方をされて、思わず苦笑する。
そこへ颯爽と現れたのは皇太子アルフォンス殿下。
軍服姿のままの立ち姿は、誰が見ても“絵になる王族”だ。
「よく来てくれたな、トリス」
「殿下」
「君の報告書、何度も読ませてもらったよ。……本当に津波を起こして奪還したのか?」
「はい。ミーナとアージェと一緒にちょっとした工夫をしてですね」
その言葉に、殿下が笑う。
「なるほど、これが噂の“雷神様"か。……父上が気に入るわけだ」
その「父上」が、ゆっくりと立ち上がった。
⸻
「諸卿」
アルトリウス王の声が、広間を静める。
陽光を浴びた冠が、まるで炎のように輝いていた。
「この度、南東の戦において並ぶ者なき功を上げたトリス=レガリオン辺境伯に、王国を代表し感謝を告げる」
拍手。けれど俺の胸は落ち着かない。
陛下の表情
これは、まだ“前置き”って感じの顔だ。
「よって、王命をもって告げる!」
大広間の空気が張り詰めた。
「王家の管轄する“オルディア港”を、辺境伯トリス=レガリオンに下賜する!!」
……やっぱりサプライズ来た。
「噂通りかぁ!?」「いきなり!?」
アリアとミーナが両脇で同時にツッコむ。
ノクスが“ニャッ!”と鳴いて尻尾を立てた。お前絶対聞いてたろ。
周囲はざわめきの渦だ。
「王家の港を……若き辺境伯に?」「南の要衝だぞ!?」
貴族たちのささやきがあちこちで飛ぶ。
王はそれを一度で押し黙らせるように、静かに手を掲げた。
「この港は、我らが民と共に蘇った場所。
王家の名のもとに立て直した者にこそ、託すに値する。だが、ひとつ提案がある」
王の声が少し柔らかくなった。
「この港の名“オルディア”は、もともとエルディア王家の名に由来する。されど、もはや王の港ではない。トリス辺境伯もやりにくいだろうし、この港は民と、そなたの港だ」
静寂。
全員の視線が王に集中する。
「ゆえに、今日をもって、その名を改める」
王はゆっくりと俺を見つめた。
「この国の“南を照らす灯”となれ。
新たなる名をハルディアとする!」
その瞬間、ステンドグラスの青が一気に光を返した。
まるで雷光が空を裂いたように。
拍手が爆発する。
王妃セシリアが柔らかく微笑み、アルフォンス殿下が深く頷いた。
宰相オルヴィウスの口元に、珍しく満足げな笑みが浮かぶ。
⸻
アリアが小声で囁く。
「トリス、やばい……今、王都で一番名前出てるよ」
「胃が痛い」
「大丈夫。辺境伯は胃痛がデフォルトよ」
「フォローになってねぇ」
ミーナが小さく笑い、ノクスが“にゃふ”と喉を鳴らす。
王がもう一度口を開いた。
「雷の辺境伯トリス=レガリオン。
お前の雷は、もはや戦を焼くためのものではない。
この国を照らす雷であれ。」
……照らす雷、か。
胸の奥が静かに熱くなる。
グラスの音、歓声、弦の旋律。
俺は小さく呟いた。
「ハルディア港、か……悪くない」
「うん、あんたっぽい」アリアが笑う。
「理想と現実の真ん中って感じね」ミーナが肩をすくめた。
ノクスが“にゃっ”、アージェが外で低く吠える。
いいさ。今度は「築く」番だ。
戦で救った港を、未来の拠点に変えてやる。
外で雷が一閃、空を切り裂いた。
まるで、ハルディアの誕生を祝うように。
応援ありがとうございます!
皆さんのブクマや評価が更新の大きな力になっています!٩( 'ω' )و
「次話も楽しみ!」と思っていただけたら、ポチっとお星様を押してもらえると嬉しいです!




