先手必勝 ― 疾風迅雷、海を切る
評価ポイント押してもらってたり、最後に親指グッドとかの数が増えてたり、ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
夜明け前の海は、鉛みたいに重かった。
見張り塔の上で、俺は東の水平線にじわりとのびる船団の線を見た。
「来る。火を撒かれる前に、潰す」
言い切ると、指揮所の空気がきゅっと締まる。俺は一拍で命令を並べた。
「小型三、全速。風上を切って火点を確保。主力は背で畳みかける。ミーナ、スタートは君に任せる。アリア、先頭で斬り込み。ノクスは艦上へ。アージェ、前方で面障壁を張れ。敵の航路を限定する、速さで潰すぞ!あとはこれだ!掲げろ!」
《覇軍旗ドミヌス・フラッグ》
•効果:
- 味方士気上昇・恐怖耐性・不屈発動
- 味方同士の連携精度上昇
- 致命傷を一度だけ耐える「奇跡」発動
- 「正しく導く者」にのみ真価発揮
覇軍旗が掲げられた瞬間、仲間たち全員が高揚感に包まれ、誰かれともなく、雄叫びが轟いた!
「行くぞーーー!!!」
「「「「「オーーーー!」」」」
全艦の帆が張られ、櫂が水を割る。
俺たちの三隻の小舟が闇を裂いて先行し、影猫が艤装をかすめ取り、銀狼が波を蹴る。ミーナは静かに呟いて海へ手を差し入れた。短い濡れた線を描くと、海面の粒子が微かに震える。
俺は手袋を外し、掌にじっと力を籠めた。電気はただ走らせれば良いってもんじゃない。方向を作るのが要だ。砲の向きも、導火も、火は“向きを必要とする”。
俺は磁場を張り、海中の微粒子を“線”のように束ねる。導線を作るように、軌道を固定する。
ミーナが低く息を吐いた。彼女の水の魔力が、俺の磁の“芯”に触れて広がる。水はただの水じゃない。動かせば“塊”になる。俺が磁力で方向を固定し、ミーナがその塊に押しの力を与える。目には見えないけど、確かな感触が掌から掌へ伝わる。
「行くよ。小さな力だけど、全力で始める。盛り上げは私、導きはあなた」
「任せる」
俺は掌から電磁の指向をさらに強める。海中の微粒子が一つの“帯”となり、進行方向を保つ。ミーナはその帯の先に“圧”を置いていく。小さな押しが連なり、やがて海面がさざ波ではなく“列”を成して膨らみ始めた、トリスとミーナの2人の魔力がシンクロした。
『《雷潮》!』
だが今回はそれだけじゃ終わらせない。敵が“火を撒く前”に物理的に場を変える。アージェの出番だ。
「アージェ!今だ!」
銀狼は前方の海面、敵艦の接近ルートに銀の障壁を広げた。だが今回は、防御じゃない。
アージェの障壁を海底に押し付けるように寝かせ、侯国へ向け、浅くなるように傾斜を作った。
障壁の下で波の深さが“浅く”なる。海底の水流が遮られ、波が圧縮され、盛り上がっていく!
「アージェ、深さを詰めろ。こっちへ持ってくるんだ」
「ワンッ!」
銀の面が海を押し、浅場を作る。
波の“感覚”が変わる。浅い海は波を高くする。水が走る深さが浅いほど、同じ押しで高い波が生まれる。
“深さ”を弄るなんて当たり前じゃない。だが、魔術と物理をつなげれば、やれることは増える。
「ノクス、艦首のロープを引け。舵をずらして角度を作る」
「ニャッ!」
影猫が舷側をすり抜け、船首の索を引っ掻く。小さな角度の狂いが、群れ全体の行進を崩す。そこに、俺とミーナの“波の帯”を叩きつける。
「行くぞ!」
俺が磁の芯を固め、ミーナが押しを増す。水塊は一気に膨れ上がり、海面が浅場に向けて高く盛りあがる。蒼白い縁に稲光が走る。雷は水の“芯”を通り、波に“意志”を与える。目に見える“壁”が湾口を走り、敵艦列を正確に狙って進む。
「なっ……!? 海が盛り上がってる! 津波だ!!」
「なんだあれは!!!操舵も効かねえ!!」
「に!逃げろ!!」
"ドッカーーーン"
史上、類をみない巨大な雷を纏った波が侯国を襲った。
「押す! もっと押す!」
俺は魔力量を上げた。普通なら抑えるべきサインが脳内で点滅する。だが今回は行く。限界を“強制的に超える”。掌が熱く刺すように痛む。頭の奥で鐘が鳴るが、ミーナが笑う。
「まだ持つよ。私の水は浅い。あなたの磁を芯にして」
ミーナの声に背を押され、俺はさらに一閃を込める。海の一列が、浅場の前で一斉に高く跳ねた。巨い波が、まるで刀を振るうように敵艦列を斬る。錨鎖が悲鳴を上げ、マストが折れ、船首が水をかぶって斜めを向く。火を撒くはずだった“炎弾”は、水で抑えられ、発射前に機能を失う。
「アリア、右舷群を封じろ! ノクス、残りの舵を引け! アージェ、浅場を維持!」
矢が飛び、影が刺さり、銀の面が波の腹で舵を撫でる。敵艦はぶつかる前に角度を奪われ、波がそのまま“圧”となって押し流す。派手な火の海は起きなかった。一瞬の“場の変化”が、火の可能性を奪ったのだ。
波が引いたとき、海は別の顔をしていた。火炎艦は火を失い、動けるのは散り散りだ。残りは舫いを切って退き、白旗を考えるしかない。潮の匂いが、熱に勝った。
「……やったか?」
ミーナが手ぎゅっと握ったその時
「あれっ??なにこれ?』
つぶやいた瞬間ミーナを甚大な力が襲った
「きゃーーーー!!!」
「ミーナ!!どうしたっ!!」
トリスがとっさに駆け、急ぎ、トリスはミーナを鑑定した!
ステータス変化
Lv:12 → 22
HP:620 → 980
MP:3200 → 14500
STR:85 → 115
VIT:90 → 135
AGI:110 → 160
DEX:140 → 220
INT:240 → 410
MND:210 → 350
LUK:160 → 230
トリスの魔力を取り込んだことにより、MPが異常成長をおこした。この成長は雷潮を発生させた副次的要因が大きいと推測される。
【スキル一覧】
◆ レジェンド(新規取得)
・《蒼環の理》Lv1
四大元素(炎・風・氷・水)を循環させる“永続魔導環”。戦場の気象・潮流を支配し、詠唱魔法の消費を70%軽減。トリスの魔力とのシンクロにより、元々の魔導スキルが影響を受け、派生し獲得。何者かの他の影響を受けた痕跡有り。
◆ スーパーレア
・《商導》Lv7 … 経済・軍事・魔導を結ぶ統治戦術。
・《慧眼》Lv7 … 精神干渉・未来傾向を視認。
・《交渉術》Lv6
・《多重詠唱》Lv7 … 最大5重同時詠唱。
・《魔力制御》Lv8 … 流体魔力の精密操作。
・《戦術魔導》Lv7 … 戦場の魔力流を俯瞰制御。
◆ レア
・《魔道》Lv8
→ 四大属性複合魔導対応。
・《精神耐性》Lv6
・《叡記》Lv6
◆ アンコモン
・《生活魔導》Lv6
「大丈夫よ、すごく力が溢れてきたの」
「そうだな、俺もだ」
【ステータス変化】
Lv:26 → 28
HP:1820 → 2100
MP:20500 → 25500
STR:242 → 270
VIT:220 → 245
AGI:262 → 290
DEX:305 → 340
INT:330 → 380
MND:255 → 290
LUK:380 → 420
痺れがじんじんと残るが、勝負は決まった。港は燃えていない。人々はまだ震えているが、生きている。
「燃やさせない。それが勝ちだ」
遠く、敵提督の旗艦が舵を切る。甲板に立つ男影は、敗北を受けとめるように旗を揚げる。退き際を選んだのだ。俺は刀を持ち直し、港へ向く。
「全艇、被害確認。救助最優先。沈む船は救える限り救う。ここは俺たちの海だ」
「了解!」
侯国側、港に着岸すると、まだ夜明け前の薄青に人の声が波のように広がった。歓声と嗚咽、祈りと笑いが混じる。アリアが肩を小突き、ノクスが尻尾を立て、アージェが大きく吐息をした。ミーナは濡れた髪を気にせずに笑っている。
(よし。これで“海を燃やす”手段は封じた。だが、次はもっと速く、もっと安全にやる)
東の空がほどけ、最初の陽が波頭にかかる。炎ではなく、光で海が色づいた。
「補給二時間。追撃は準備が整い次第。速さで終わらせる!ミーナ!リヴェール港に報告!追撃するぞ」
「了解」「ワン!」「ニャ!」
帆がもう一度風を掴む。雷と潮は、まだ味方だ。
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