雷と炎?
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カローネ侯国・海都アルマリウス。
夜の港は、まだ燃えていた。
波の音よりも、焦げた鉄と血の匂いが勝っている。
焼け落ちた艦が潮に揺れ、赤い反射が夜空を染めた。
「……あの光を越えねば、勝ちはないのか。」
提督レイバートは静かに呟いた。
海の向こう――かすかに見える王国の灯。
それは遠く、小さく、それでいて痛いほど眩しかった。
背後で、下卑た笑い声が響く。
「ガハハハハッ! 雷神? はっ、笑わせるわ!」
宰相ベルド・ガルマ。
肥えた腹を揺らし、金の杯を振って酒をまき散らす。
「子ども一人に怯えるとは、提督も老いたな! 海で負けた? ならば、焼き払え!」
「……焼く、だと?」
レイバートが目を向ける。
「港を焦土にすれば、民が死ぬ。」
「民? 敵の民だぞ? 燃えればただの灰だ!」
その瞬間、レイバートの瞳に冷たい光が宿った。
「……その言葉は、この国を沈める。」
「ほう?」宰相の笑みが凍る。
「英雄気取りか。だが侯の命は絶対だ。“炎弾艦隊”を出せ。王国を焼け、それが命令だ。」
その言葉を合図に、桟橋の奥で鉄の鎖が軋んだ。
黒鉄の艦列が現れる。
炎弾艦火を吐く竜を模した新型戦艦だ。
甲板の砲門が赤く脈動し、波間に燃える影を落とす。
「……海を、焼く気か。」
レイバートは低く呟く。
「海で生きる国が、海を殺す。……終わりだな、ベルド。」
「何を?」
「いや、貴様の命ではなく、この国の末路を言った。」
レイバートは踵を返し、炎の港を背に歩き出す。
燃え残った甲板の破片が、足元でパキリと音を立てた。
⸻
エルディア王国・リヴェール港。
潮風が夜を洗い流していた。
修復の槌音、船大工の掛け声、焦げた木の匂い。
あの日の地獄が、少しずつ“街”へ戻っていく。
「トリスちょっといいかな?」
ミーナが手元の報告書を広げる。ミーナには南部の総指揮を拝命したため、助力としてリヴェールに旗を持って来てもらっていた。
「カローネ侯国なんだけど、また、艦を集めてるみたい。たくさんの樽のような物を積み込んでるらしいよ。」
「……もしかして、樽は油かも。」
トリスは静かに水平線を見つめた。
「海を炎で覆う気か。」
アリアが矢を指に挟み、軽く弦を弾く。
トリスは口元を緩め、空を見上げた。
遠くの雲間に、青白い稲光が走る。
まるで、雷が呼吸しているかのように。
「来るな……“炎”か、でも…………もしかしたら、できるかもしれないな。 ミーナちょっといい?」
トリスは意味深に呟き、ミーナを呼んだ。
⸻
カローネ侯国・前線造船基地。
鉄と油の匂いが混じる夜。
火薬を詰める兵たちの動きが慌ただしく、溶接の光が闇を照らす。
レイバートは桟橋の端で一隻の艦を見上げていた。
旗艦。
船首には火炎を象った竜の彫刻が刻まれ、砲身が唸りを上げている。
副官が問う。
「提督、本当に出陣なさるのですか。あの艦は……化け物です。」
「ああ、出る。」
レイバートの声は静かで、どこか諦めにも似た響きを持っていた。
「俺はこの海を焼く。だが――貴族のためではない。」
副官が息を呑む。
「王国の雷神……。貴様を超えねば、この腐った国を正す資格がない。」
彼の視線は、既に王国ではなく、自国の闇を見据えていた。
波が砕け、火花が夜空に舞う。
遠く――リヴェールの空に、青い閃光が走った。
雷の唸りが、炎の咆哮と呼応する。
レイバートは静かに呟く。
「雷神トリス・レガリオン。
次こそ、貴様の“覚悟”を見せてもらう。」
炎と雷。
二つの光が、再び海の上で出会おうとしていた!?
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