海を裂く雷光
ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
蒼い海原の向こう。
朝靄を切り裂くように、黒い影が幾重にも押し寄せていた。
「……来たか」
トリスが呟いた。
高台の見張り塔から望む沖合は、もはや水平線ではなかった。
そこには、黒鉄の艦隊、侯国の第二波、主力艦列が並んでいた。
波を割って進むその船群は百隻を超え、帆には血のように赤い紋章。
先日の偵察隊や強襲艦とは比べ物にならない。
これが本隊。
王国を本気で沈めるための軍勢だ。
「まるで……海そのものが敵になったみたいだな」
アリアが息を呑む。
潮風が金髪を乱し、頬をかすめた。
港の兵たちも、声を失ったまま立ち尽くしている。
だが、トリスの視線は静かだった。
その瞳には恐怖よりも、冷静な光が宿っていた。
「……戦場が広がるなら、俺も広げればいい」
アリアが眉を上げた。
「広げる?」
「電気も、磁気も、海水に通すことはできる」
トリスは掌を見つめた。
小さく放電した火花が、波の飛沫に吸い込まれて消える。
「なら、海を“武器”にすればいい」
アリアが息を呑み、すぐに笑みを浮かべる。
「あなた、またとんでもないことを考えてるわね」
「いつも通りだ」
短い会話のあと、トリスは背後の仲間に声をかけた。
「アージェ、ノクス!準備はいいか」
「ワン!」
銀狼が吠え、周囲に魔障壁を展開する。
光が波打ち、潮の匂いを裂くように広がった。
「ニャッ」
影猫ノクスはすでに桟橋の影に潜り、港の隅々に影糸を伸ばしている。
その先には、侯国の上陸舟が見える。
黒く光る帆、鉄の爪を備えた船首。
「来るぞ!」
レオン・ハーヴィスが叫んだ。
若き将は槍を掲げ、兵たちの士気を高める。
「第一陣、構え! 敵を浜に上げるな!」
グラハム老将が低く唸った。
「……だが、この数は想定外だ。下手に打って出れば挟撃されるぞ」
「わかってる」トリスが答える。
「だからこそ、今は、俺たちで“時間”を稼ぐ」
アリアが振り向いた。
「まさか、あなたが出るの?」
「まさかじゃない。出る」
「一人で?」
「四人で、だ」
そう言って、トリスは静かに笑った。
アリアの唇がわずかに震えた。
「……まったく、止める気も失せるわ」
「止めても無駄だからな」
海風が二人の間を抜ける。
遠く、波の向こうで太鼓が鳴った。
侯国の艦隊が砲門を開き、黒煙が空を覆い始める。
トリスは刀《繋》を抜いた。
刃に青白い稲光が走る。
「よし、始めよう」
海岸線へ向けて歩き出す。
アリアが続き、アージェが唸り、ノクスが影の中に消える。
その背中を見送りながら、レオンが小さく呟いた。
「……あれが、戦場の“若き獅子”か」
⸻
波打ち際。
侯国の上陸艇が浜を目指して押し寄せる。
船底が砂を削り、金属が軋む音が響く。
「斬り込むぞ!」
トリスが叫ぶ。
次の瞬間
青白い光が爆ぜた。
《電磁誘導》
稲妻が海面を這い、潮の波紋が光の筋へと変わる。
船の金属、鎧の留め具、槍の穂先、すべてが震え、互いに弾き合った。
「な、なんだ……!?」
「鎧が動かねぇっ!」
「槍が!手から離れた!?」
混乱する兵たちの中を、アリアが駆け抜ける。
「はあっ!」
二刀が風を裂き、敵の列を一瞬で断ち割った。
彼女の後を影が滑る。ノクスだ!
影走りで海面を駆け、敵船に飛び乗る。
その一撃が、船の舵を断ち切った。
「グルルッ!」
アージェが咆哮を放ち、銀障壁を展開。
迫る矢弾を全て弾き返し、後方の民兵を守る。
トリスの視界に無数の光の線が走る。
電流と磁場が絡み合い、世界の輪郭が変わっていく。
波のうねり、風の向き、金属の反応。
全てが“見える”。
(……行ける)
トリスは片手を前に突き出した。
青白い稲妻が走り、潮風を割く。
「電流、流せッ!」
轟音。
稲妻が海を裂き、敵の上陸舟が次々と爆ぜた。
爆風が浜を包み、黒煙が立ち上がる。
「ま、魔法じゃねぇ……! なんだあの力は!」
「雷神か!? 人かよあれ!」
侯国の兵が後退を始める。
恐怖が波のように広がる。
だがトリスは刀を下ろさなかった。
息を荒げながら、ただ前を見据える。
(この力は……まだ制御しきれない。でも、守れる)
アリアが隣に並び、二刀を構える。
「やるわね、雷神様」
「……そんな呼び方やめろ」
「もう広まってるかもよ」
「マジか……」
二人の軽口に、アージェが鼻を鳴らし、ノクスが喉を鳴らす。
だが、その短い会話の裏で、再び沖が動いた。
「まだだ! 第三列、進撃してくる!」
見張りの声が響く。
トリスは息を吸い、刀を掲げた。
「なら、全部迎え撃つまでだ」
蒼い稲光が刃を包み、再び海を照らした。
リヴェール港、第二波防衛戦、開戦。
評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!
初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




