報告、そして決断
ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
静寂を切り裂くように、執務室の扉が開いた。
重厚な書類の山の向こうで、王国宰相オルヴィウが眉を上げる。
「……戻ったか、伝令」
低く落ち着いた声。だが、その瞳はすでに険しい。
伝令は膝をつき、深々と頭を下げた。
「はっ! カローネ侯国軍、リヴェール南岸より撤退を開始との報です!」
「ほう……」
オルヴィウは手にしていた羽ペンを置き、顎に手を当てた。
「つまり、トリス・レガリオン子爵が……勝ったか」
伝令が頷く。
「はい。子爵率いる小部隊の奇襲により敵前線が崩壊。指揮官格である“戦鬼バルド”なる男が重傷を負い、退却した模様です」
その名を聞いた瞬間、オルヴィウの目が鋭く光った。
「戦鬼バルド……侯国が誇る猛将だぞ。あれを退けたというのか……あの若造が」
驚愕ではなく、感嘆に近い息が漏れた。
そして、机上の羊皮紙の束を手に取る。
それは先日まで、侯国使節が突きつけてきた“トリス領の不正証拠”の写し。
その隅に、小さく書き加えられた宰相自身の筆跡がある。
「発信元:レーン子爵およびコルナ男爵。情報の真偽、再調査中。」
オルヴィウは目を細めた。
「……やはり、この二人か」
そのとき、執務室の扉が再び開き、近衛が駆け込んだ。
「報告! 侯国側から拘束者二名、王国貴族レーン子爵、コルナ男爵とのこと! 虚偽情報の流布により、侯国軍へ甚大な損害を与えた罪で拘束された模様です!」
オルヴィウの手が止まる。
「……捕まったか」
数秒の沈黙。
だが次の瞬間、老宰相の口元にわずかな笑みが浮かんだ。
「なるほど……天は見ていたということだな」
立ち上がり、近衛に命じる。
「すぐに陛下に報告を。王城の謁見の間を整えよ。事は大きい。王国としての裁定を下さねばならぬ」
近衛が走り去る。
その背を見送りながら、オルヴィウは独りごちた。
「やはり、若き子爵を軽んじるべきではなかったな。民に愛され、力を持ち、敵国を退けたその名は、もはや王国の盾だ」
羽ペンを取り、机の上の報告書に新たな一文を記す。
『王命を以て、トリス・レガリオン子爵に南方防衛の全権を委任す。』
その筆跡は、揺るぎなく力強かった。
⸻
王の間
やがて、玉座の間。
報告を聞いた王アルトリウスは、静かに目を閉じた。
「……やはりか」
老王の声は、重く、それでいて確信を帯びていた。
「レーン、コルナあの愚か者どもが他国を焚きつけ、己の利に走ったか。結果、民を危険に晒したのだ。許し難い」
オルヴィウが深く頭を下げる。
「すでに侯国が拘束しておりますが、我が国としても正式に断罪を行うべきかと」
「無論だ。民を裏切る者に、爵位を与えておく理由はない」
王はゆるやかに立ち上がり、窓の外、遠く南の空を見つめた。
蒼く霞むその彼方に、若き子爵が立っている。
「……若き獅子よ。お前が守った港が、王国を救った」
老王の瞳には、わずかに笑みが宿っていた。
そして静かに告げる。
「オルヴィウ。トリス子爵へ伝えよ。
“王国の盾”として、正式に南方防衛軍の指揮権を与える」
宰相は恭しく頭を垂れた。
「御意。必ず」
王の声が玉座の間に響く。
「戦は続く。だが、今度は我らが先に動く番だ」
⸻
戦の翌朝
リヴェール港の夜は静まり返っていた。
黒煙の残り香がまだ空に漂い、焼けた木の匂いと潮風が混じる。
港の波止場では、瓦礫を片付ける兵や民の姿があった。
それでも、誰もが口にする言葉は一つだった。
「トリス様が守った」と。
桟橋の先、仮設の執務室で俺は王都から届いた封書を受け取った。
ノクスが影の中から滑るように現れ、足元で小さく鳴く。
「おつかれ、ノクス。……早かったな」
黒猫の瞳が、光を反射して瞬いた。
王都との連絡網はすでに整っている。だが、正式文書を託すのはこの小さな伝令だけだ。
俺は封を切り、羊皮紙を広げた。上質な筆跡が、端正に並んでいる。
『王国子爵トリス・レガリオン。
リヴェール港防衛の報を聞き、陛下は深く感謝しておられる。
ただちに補給と兵站を整え、第二陣を派遣する。
そなたには前線の統括指揮を任ずる
宰相オルヴィウス』
そこに、王の署名が添えられていた。
アルトリウス・エルディア。
その名を目にした瞬間、胸の奥がかすかにざわめいた。
初めて見るはずの筆跡なのに、どこか懐かしい。
墨の香りと共に、言葉にできない温かさが胸の奥を撫でていく。
(……王が、俺を信じてくれたんだな)
手にした羊皮紙をそっと閉じ、息を吐いた。
王国の旗の下に集う民を守る責任、その重みを、初めて実感した気がする。
外ではアリアが兵たちに指示を出し、アージェが瓦礫を押しのけていた。
ノクスは再び影の中に溶け、静かに身を潜める。
「よし……」
俺は刀《繋》の柄に触れ、空を見上げた。
雲間から覗く青が、少しだけ明るく見えた。
「ここからが本当の戦いだ。リヴェールを、王国を守る」
波が打ち寄せ、陽光が港を照らした。
静かな朝の中、風が新たな戦の予感を運んでいた。
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




