影が運ぶ報せ
とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
オルディア港を覆っていた炎と煙は、ようやく収まりつつあった。
焦げた倉庫の残骸からはまだ煙が立ち、潮風に乗って苦い匂いが広がる。だが民たちの顔には、確かな安堵の光が宿っていた。
「……勝ったな」
トリスは剣を拭い、静かに息を吐いた。
背中に貼り付いた汗が冷たく、戦場の熱気がまだ肌を刺していた。
アリアが双剣を収め、肩で息をしながら周囲を見渡す。
「奪還はできたけど、これで終わりじゃない。きっと侯国は、もっと大きな軍を動かしてくる」
「だな」
トリスは頷き、隣に立つ銀狼アージェを撫でる。彼の赤い瞳はまだ油断を許さぬ光を宿していた。
影からノクスがすっと姿を現す。琥珀色の瞳が「次の命令を」と問いかけていた。
⸻
トリスは目を閉じ、《情報網》を展開する。
意識の奥に無数の線が広がり、領地の政務を担うミーナへと即座に繋がった。
『こちらトリス。先般略奪されたオルディア港、奪還完了』
声なき声が、ミーナの意識に届く。
しばしの沈黙の後、冷静な返答が返ってきた。
『状況を詳しく。被害、敵の規模は?』
『将校グランツを討ち取った。侯国兵は壊走、捕虜多数。港の被害は甚大だが、まだ機能は残っている。ただし再侵攻は必至。至急、王国へ援軍要請が必要だ』
『了解。政務はこちらで整える。正式文は?』
『今、ノクスに持たせる』
意識の線が途切れる。
⸻
トリスは羊皮紙を取り出し、震える指でペンを走らせる。
書簡
『至急、王国軍へ通達願う。
オルディア港を奪還したが、被害は甚大。侯国軍の再来襲は避けられぬ。
港は補給拠点として死守すべき要地。
よって王国は直ちに部隊を派遣されたい。
援軍到着までの間、我トリス・レガリオンと仲間はこの地を守り抜く。
トリス領主 トリス・レガリオン』
筆を置き、羊皮紙を丁寧に巻いて紐で結ぶ。
⸻
ノクスが前足を揃えて待つ。
トリスは小袋に収めた書簡を彼の首に結びつけ、低く囁いた。
「ノクス、これをハルトンへ。ミーナの手に渡せ。その足でギルドと王城に届けられるよう指示してくれるはずだ」
ノクスは小さく「ニャ」と鳴き、尾を揺らして誇らしげに胸を張る。
次の瞬間、黒い影へと溶けて消えた。
アリアがその姿を見送りながら、息を吐く。
「……あの子がいなかったら、領地と王国を繋ぐ手段はもっと限られてたわね」
「だからこそ任せられる」
トリスは視線を港に戻し、険しく言葉を続けた。
「俺たちはここで耐える。援軍が来るまで、絶対に」
アージェがワゥンと吠え、空気が引き締まる。
焦げた匂いの残る港に、次なる戦の気配がじわりと漂っていた。
⸻
夜のハルトンダンジョン都市
領主館の一室
書斎だけが、ランプの光に淡く照らされていた。
机の上には羊皮紙が幾重にも積まれている。人口調査の記録、街長たちからの報告、財政収支の帳簿。
そして一際目立つのは、すでに筆を入れ終えた一通の要請書
「王都への援軍要請文」
その横に、赤い封蝋とレガリオン子爵家の印章が並んでいた。
眼鏡を押し上げながら、ミーナは細身の指で机を叩く。
その瞳は疲労の影をにじませつつも、鋭さを失ってはいない。
《情報網》を通じて、トリスが南西の港を奪還したことはすでに知っていた。
だが、王都を動かすには「正式な報告」が不可欠だ。
その時、部屋の隅の影がふっと揺れた。
黒い影が床を滑り、机の上へ跳び乗る。
「……ノクス」
黒猫は短く「ニャ」と鳴き、口に咥えた巻物を机に置いた。
トリスの署名が入った奪還報告である。
ミーナはそれを受け取り、目を走らせる。
紙の上に刻まれた字は力強く、勝利の確かさを伝えていた。
読み終えた瞬間、胸の奥で強張っていた何かが、ようやく緩む。
「……正式報告!これで送れる!」
小さな声だった。
しかしその一言に、全ての緊張と安堵が凝縮されていた。
机の脇には、すでに完成していた援軍要請文が置かれている。
奪還を前提に準備した文。今まさに役目を果たす時だった。
ミーナはノクスの前に膝をつき、その瞳を覗き込む。
銀色の瞳は、彼女の想いを映すようにじっと揺れた。
「これで証拠も揃った。ノクス、王都へ届けて」
ノクスは小さく喉を鳴らし、まるで「任せろ」と言わんばかりに尾を振った。
ミーナは報告文と要請文を重ね、蝋を溶かしてレガリオン家の印を押す。
文をしっかりと括りつけると、ノクスの背を撫でた。
「トリスが戦場で剣を振るうなら……私は机の上で戦う。
領民も、兵も、王国も――その未来を守るために」
黒猫は静かに頷いたかのように瞳を細め、影へと溶けるように消えた。
残された部屋には、再びランプの灯りと紙の匂いだけが残る。
ミーナは机に腰を戻し、次の羊皮紙を手に取った。
王都からの返答が届くまで、少しの油断も許されない。
補給計画、兵站整理、港を奪還した後の復興手順――やるべきことは山ほどある。
彼女は深く息を吸い、筆を握り直した。
疲労で指先が震える。だが、止めるわけにはいかない。
「トリス……必ず支える。あなたが前線で戦えるのは、私が後ろで守っているから」
静寂の夜に、その決意だけが響き渡った。
評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!
初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




