表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
戦火の港湾

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

174/271

戦支度、二つの旗

とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。

 王の裁定が下ったその夜、王都の執務棟では灯が消えなかった。

 宰相は巻物を机に広げ、矢継ぎ早に命を飛ばす。


「軍備、糧秣、輸送。三手同時に動かす。王都軍は一隊を南東へ。近衛は王都防衛に残す。商会連合へは弓と矢羽を五万、穀糧は三月分だ」

「伝令! リヴェールへ急報――桟橋の固定、倉庫の封印、火薬庫の移設!」

「冒険者ギルドへ布告稿、用意できたか」

「できております、『王国名義の特別依頼』として貼り出します!」


 書記官たちが走り、封蝋に王紋が押されてゆく。

 廊下の曲がり角で、皇太子が足を止めた。宰相と視線が交わる。


「……若き子爵を前線に置くことに異論も上がるだろう」

「承知の上です。ですが、殿下。彼は『先陣に立つ』と民の前で誓いました。旗は、掲げられた時に最も風を掴む」

「ならば、風を途切れさせるな。王国全軍の連絡線に彼の《情報網》を載せる。書式は王国側に合わせるが、実務は彼の領の才覚に準ずる」

「御意」


 王都で指示の輪が広がる、その頃。


 ◇


 ハルトン領主館


 地図卓に四都市の図が広がり、ミーナが次々と札を置いていく。


「まず輸送。グレインハルトの穀倉から主街道を通すのは危険。森沿いを抜けてロックハルトで一旦集積、炭と木材の荷車に偽装して王都へ、ここで王都軍の輸送列と合流」

「鍛冶は?」とカイン。

「あなたの鍛冶場を中核に、ハルトン三工房を徹夜稼働。刃物は短剣を優先、次に槍頭。弓は弦の在庫が薄いから王都へ発注。矢羽はロックハルトの鳥小屋組合に買い付けを掛けたわ」

「テルマハルトは癒やし班な」とトリス。

「うん。双子座の水瓶は噴水に固定のまま。外すのはリスク。街長セオドアと宿屋組合に“湯の担架ゆかつぎ”隊を組ませた。前線行きの湯壺は十基、交代制で回す」


 アリアが二刀を外し、机に置いた。

「斥候は私がやる。アージェの障壁とノクスの影走りを合わせて、偵察隊を二重に。……それと、冒険者の振り分けは?」

「階位で三層化する」ミーナは即答した。「A・Bは前線支援。Cは護衛と救助。D以下は街道警備と避難誘導。報酬は王国持ち、前金は領内基金から後で王都清算」


 トリスは四都市の街長文書を確認し、頷いた。

「エルマー、セオドア、グスタフ、マルク。各市の動員規模は妥当だ。だが“人を出す”だけが支援じゃない。留守を守る者にこそ礼を。この書簡、俺の名で出す」


 ミーナがさらりとペンを替える。

「了解。言葉を少し柔らかくしておく。“皆が君たちが残ってくれるから前線が戦える”。――これで民の心が折れない」


 カインが工具袋を叩いて笑った。

「じゃ、俺は火花を散らしに戻る。刃は足りないなんて言わせねえ」

 フレイアが片手を上げる。

「火は任せな。綺麗に、丈夫に、速く。――あんた(トリス)が無茶するなら、戻る道しるべくらいは残しといてやる」


 アージェが低く喉を鳴らし、ノクスが影の中を一歩すべる。

 言葉は要らない。――行ける、の合図。


 トリスは皆を見渡し、短く言った。

「動く。今日から、戦だ」


 ◇


 夜、ハルトン中央広場。

 石畳に松明の列が揺れ、ダンジョンビューの魔晶板が告知を映し出す。

 四都市の街長が並び、民と冒険者の海が静まった。


「王国より特別依頼、布告!」

 書記の声が響く。

「沿道警備、避難誘導、負傷者搬送、港湾防衛――各任務ごとの募集要項、報酬、交代制、誓約の取り決めを読み上げる!」


 ざわめきの中、トリスが前に出た。

「俺は先陣に立つ。だが――背中は、みんなに守ってもらう。前も後ろも“守り”だ。どれが欠けても勝てない」

 沈黙ののち、拳がいくつも上がった。

 「任せろ!」「道は俺らが開ける!」「湯は絶やさねえ!」

 声の渦が、恐れを熱に変えていく。


 ミーナが最後に一言だけ加えた。

「名簿はここ。誰が何を担うか、私と一緒に決めよう。あなたの力が、明日の命を救う」


 ◇


 同刻、カローネ侯国・南岸の砦。

 風は湿り、松明の煙が低く滞る。

 地図の上に駒が叩きつけられ、侯国将軍が冷たく言った。


「港を焼け。倉庫を押さえ、桟橋を切れ。王国の喉を掴めば、剣より先に膝をつく」

 その背後、痩せた男爵――コルナがいやらしく笑う。

「“証言者”には口止め金を。鑑定書の追記も済んでおります」

 銀髪のレーン子爵は鼻で笑った。

「王国は“癒し”で民を縛る。ならば我らは“恐れ”で縛ればよい。火は言葉より早く広がるものだ、傭兵団に金は払う。盾となり刃となれ。黒煙の向こう側に、我らの取り分が待っている」


 傭兵たちが笑い、油の染みた布で刃を拭った。

 南の海は静かだ。だが、遠くで鈍い波音が増えている。


 ◇


 明け方。ハルトン南門


 荷車の列が動き出す。炭俵の底に包んだ矢束、木箱に偽装した短槍頭、湯壺の周りには布で巻いた携行具。

 街道沿いに立つ人々が、掌を胸に当てて見送った。

 トリスは鞍上から一度だけ振り返る。

 噴水の中の双子座の水瓶が、かすかに星のように瞬いた。


 アリアが隣で笑う。

「帰る場所、ちゃんとある」

「帰ろう。勝って、全部連れて」


 ミーナの声が《情報網》と《大統治》を伝って隊列全体に響いた。

『第一梯団、南東へ。第二梯団、半刻遅れで追随。街道分岐で集合地点確認――全隊、出発』


 号令ののち、蹄が一斉に地を蹴る。

 王国の旗と、四都市の旗と、若き領主の決意が、同じ風を掴んだ。


 戦は、始まった。

評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!

初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。

AIをとーても使いながらの執筆となっております。

あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ