玉座より立つ影
とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
蒼晶の眠る洞 三十層
ジェネラルが崩れ落ち、戦斧が鈍い音を立てて転がった。
広間の空気が一瞬だけ軽くなるが、それはすぐさま別の重みに押し潰された。
ギ……と、椅子の軋む音が鳴り
玉座の上の影が、ゆっくりと腰を上げる。
カイザーゴブリン。
黒鉄の甲冑をまとい、無駄のない筋肉を纏った中背の体。
黄金の双眸がこちらを射抜いた瞬間、広間の温度が数度上がった気がした。
脳にズンと響く。
"見よ"
声ではない。魔力の震えがそのまま意味として突き刺さる。
残ったゴブリンたちは一斉に膝をつき、次の瞬間には立ち上がり陣形を組み替えた。
「来る……!」
俺が刀を構えると、アージェが吠え、ノクスの毛が逆立つ。
アリアは一本の矢をつまみ、息を整えた。
カイザーは音を立てず、二歩、三歩と前へ。
両刃剣を抜くと、赤い炎が刃に灯り、金属が唸った。
コツ。
床を叩くような小さな魔力の脈動。
"燃え、割れ"
炎を纏った斬撃が水平に払われ、前衛ごと空気が潰れる。
「アージェ!」
「ワォンッ!」
障壁が悲鳴を上げ、ひびが走った。
俺は受け流しながら叫ぶ。
「ノクス、側面! アリア、上から!」
「ニャッ!」
「任せて!」
ノクスが影から飛ぶ。しかしカイザーは踵で床を鳴らすだけで
"回れ"
影の出口にローグが二体。待ち伏せるように刃を差し込み、ノクスの軌道を塞ぐ。
毛先が裂け、ノクスが爪で反撃するも、体勢は崩れた。
アリアの矢は、カイザーの剣で二つに割られる。
「……速っ!」
彼女は即座に二刀を抜き、俺の横に並んだ。
「無理はするな。あれは格が違う」
俺がそう告げた刹那、また意味が落ちる。
"刻め"
刃が床を叩く。
遅れて衝撃が蛇のように這い、アリアの足元で爆ぜた。
「くっ……!」
アリアが滑り、膝をつく。その隙に弓兵の矢が飛ぶ。
俺は身を投げ出し、三本を弾き、一つを肩で受けた。熱い血がにじむ。
(同時命令の隙は突いた。だが今は半拍ずらし……! 前衛、中衛、後衛が波のように連続で襲う。学習の速さが桁違いだ)
アージェが再び障壁を張るも、斬撃が角を削ぎ取る。
「ワンッ!」
障壁が裂け、アージェが横へ跳ぶ。
"塞げ"
盾の列が横滑りし、退路を塞ぐ。
ノクスが影に潜ろうとしたが――
"照らせ"
シャーマンの火が床に落ち、影が浅くなる。ノクスは潜れず、爪で踏ん張った。
「影狩りまで……!」
俺は歯を食いしばり、剣を合わせる。
刃の芯が重い。ただ剣を振るうだけでは追いつけない。
(剣と体を別々に動かしていては間に合わない。全部を“一本の線”にまとめなきゃ――)
脳裏に浮かぶのは、かつての訓練場。
カインと汗まみれで打ち合った日々。
「腕だけで振るうな、足も腰もまとめてぶつけろ」 鍛冶師の彼がカッコつけ、それっぽいことを冗談交じりに言った言葉。
冗談で言っていた言葉。だが俺には、その感覚が染みついていた。
「トリス、下がって!」
アリアが二刀で割って入り、俺の肩から矢を引き抜いた。
「痛っ……助かった。行けるか?」
「行くしかないでしょ?」
二人で笑い、すぐ真顔に戻る。黄金の瞳が迫っていた。
"沈め"
重圧。膝が床に吸い寄せられる。
アリアが膝をつき、アージェが肩を沈める。ノクスも低く伏した。
「……ッらぁ!」
俺は踵で床を打ち、体の軸を一本に通す。
腰から肩、腕、刀先――全部がひとつの“柱”になり、斬撃を受け流した。
「アリア、半拍遅れて!」
「了解!」
俺が左へ崩す。半拍遅れてアリアが右剣を鎧に滑り込ませる。浅いが通った。
"退け"
カイザーは下がらない。代わりに後衛が射ち、中衛が詰め、退路を“作って”体を滑らせる。
戦場そのものを動かし、自分は中心に居座る。
「……ふざけた皇帝だな」
吐き捨てると、頭の奥で短く笑う気配。
"見上げよ"
天井から炎の矢束。
俺はアリアを引き倒し、アージェの背に隠れる。ノクスは影の隙間を無理矢理裂いて避けた。
広場のダンジョンビューがどよめく。
「トリス様、避けろ!」
「アリアちゃん無事か!」
祈りと悲鳴が波のように押し寄せる。
俺は一瞬だけ目を閉じ、胸の鼓動を数えた。
一、二、三――半拍。
カイザーの“刻み”が、もう骨の奥にまで染み込んでいる。
(なら逆に、半拍“早く”割り込む)
「アリア、次は俺が半拍早い。お前はさらにその半拍先へ!」
「了解! ノクスは?」
「アージェの影を深くしてやる。アージェ、床に影を作れ!」
「ワンッ!」
銀障壁が床を覆い、影が濃くなる。ノクスがそこへ潜り込む。
"砕け"
「今だ!」
俺は半拍早く踏み込み、胸甲の合わせ目に刀を滑り込ませた。
硬い。だが、止められても次がある。
アリアが俺の肩を踏み台に跳び、さらに半拍早く逆側を斬った。
黒鉄がパキと欠ける。
黄金の瞳が細くなった。
"散れ"
矢と槍が一斉に飛ぶ。通路がまた塞がる。
「ちっ……!」
俺は舌打ちし、深く息を吸う。
(剣だけじゃ届かない。体の軸と、仲間の呼吸も全部まとめろ――)
火が胸骨の奥に灯る。
アリアと目が合う。アージェが踏みとどまり、ノクスが影を震わせる。
広場の視線が、俺たちを押し出す。
(もう少しで届く……!)
カイザーが肘を引き、静かに宣告する。
"終われ".
炎が広間を覆う。
俺は半拍早く踏み出した。
剣と体を一本に束ね、仲間の呼吸と重ねる。
「――まだ終わらせない。ここで“支配”を折る!」
刃が交差する直前、胸の火がぼうっと広がった。
(来い、俺の――)
評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!
初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




