静水に潜む影
とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
蒼晶の眠る洞 第25層手前
風の層を越え、水脈の層をも突破した俺たちは、緩やかに下る通路を抜けた。湿気の多い空気がすっと消え、足元の水気も乾きはじめる。
「……ここ、変ね」
アリアが髪を払いながら周囲を見回す。
洞の一角に、ぽっかりと広い空間があった。湿り気は残っているが、床は平坦で水脈も走っていない。苔の光も安定していて、まるで「ここで休め」と言わんばかりだ。
「安全地帯、か」
俺は刀を軽く振って水滴を払う。
「ようやく腰を下ろせるわけだ」
アリアが双剣を背に納め、両腕をぐーっと上へ伸ばす。ぱき、と肩から軽い音がした。
「ワン」
アージェが鼻を鳴らし、床に伏せる。銀毛を揺らしながら尾を打ち、ようやく緊張を解いたらしい。
「ニャ」
ノクスは影から滑り出てきて、そのまま毛繕いを始めた。尻尾を左右に振り、こちらの様子をちらちら伺う。
⸻
「腹ごしらえだな」
俺は《無限収納》に手を入れ、布包みを取り出した。中から現れたのは、燻製肉を挟んだ厚切りサンドと、干し茸と根菜を煮込んだスープ。そして、果実を細かく刻んで練り込んだ焼き菓子。
「……なにこれ、豪華じゃない」
アリアが目を丸くした。
「昨日まで硬いパンと干し肉ばかりだったのに」
「そりゃ、節目の前くらいは贅沢してもいいだろ」
「ずるいわ。最初から持ってたのね」
「タイミングを見て出すのが演出ってもんだ」
「演出で食べ物を隠すな!」
文句を言いながらも、アリアはスープをすくい口に運んだ。湯気に顔をほころばせ、しばらく黙ったあとで小さく呟く。
「……美味しい。疲れが抜ける」
「ワン!」
アージェがすぐに欲しそうに鼻を鳴らす。尾をばたばた振って、前足で地面をかいた。
「少しだけな」俺がサンドを差し出すと、幸せそうに噛みしめる。顎の力が強すぎて、パンが一瞬で消えた。
「ニャッ」
ノクスは焼き菓子に前足を伸ばし、器用につまんで口に運ぶ。喉をゴロゴロ鳴らしながらこちらを見上げ、勝ち誇ったように座り直した。
「ふふ……ほんと、こういう時間って大事ね」
アリアが頬を赤らめながら弓紐を締め直す。
「戦いの前に、ちゃんとお腹いっぱいになれるなんて、ちょっと冒険者っぽい」
「冒険者っぽいって何だよ」
「わかるでしょ? “命のやりとりと、温かいご飯はセット”ってことよ」
「……説得力あるな」
俺もスープを口に運んだ。しみる。胃の底に火が灯るようで、疲労がふっと薄れていく。
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食器を片付け、装備を締め直してからふと気づいた。
「……静かだな」
思わず呟き、耳を澄ます。
二十四層では絶え間なく響いていた水音が、この空間には一滴も届かない。苔の揺らぎすらなく、あまりに不自然な静けさ。空気が凍りついたようだった。
「次が二十五層……節目よね」
アリアの声がやけに大きく反響する。
「ああ。ボスがいる。これまでとは違う」
「ワン」アージェが低く唸る。
「ニャ……」ノクスの毛も逆立っていた。
通路の奥。
下へと続く階段が黒く口を開けている。青白い苔の光は途中で途切れ、その先は闇。
「……嫌な気配だ」
俺は刀の柄に手を置き、仲間を見た。
「準備は?」
「万全」アリアが矢筒を背にかけ直す。双剣も腰に下げている。
「ワンッ!」
アージェは障壁を薄く展開し、今にも飛び出せる構えを取った。
ノクスは床の影に体を沈め、瞳だけを青く光らせる。
俺たちは視線を交わし、同時に階段を下りはじめた。
⸻
25層の広間
足を踏み入れた瞬間、湿気が全身を包んだ。
天井の高い広間。床一面が濁った水に覆われ、中央に巨大な溜まりを形成している。水深は浅そうに見えるが、奥は暗くて底が見えない。
苔の光は壁際だけをかすかに照らし、水面は黒に近い色をしていた。息を吸うだけで、肺に冷気が沈むような圧迫感がある。
「……水音が、しない」
アリアが囁いた。
これほど広い水場なのに、滴の音ひとつしない。波紋すらなく、鏡のように平らな水面が広がっている。
その静止した水の底で、何かが動いた。
⸻
「今……揺れた?」
アリアが弓を構える。
「気のせいじゃない」
俺は刀を抜き放った。
水面の奥、闇の中で巨大な影がゆっくりと蠢いている。形は掴めない。ただ確かに、岩のような塊が沈み、そして移動していた。
水は音を立てないのに、胸の奥に響く低いうなりだけが伝わってくる。
「ワルルル……」
アージェが牙を剥き、障壁を広げる。
「ニャアッ……!」
ノクスも背を丸め、毛を逆立てた。
「まだ出るな。動きを読め」
俺は仲間を制し、影に目を凝らす。
広間の中心。黒い影がひときわ大きく揺れた。水面が波立ち、わずかに泡が上がる。
その瞬間、背筋に冷たいものが走った。
(いる……これは、ただの群れじゃない)
二十五層の主が、この水の底で待っている。
⸻
「来るぞ」
俺が声を落とした瞬間、水面がぐらりと歪んだ。
濁流が広間いっぱいに広がり、光が千切れて消える。
巨大な何かが、底から浮かび上がろうとしていた。
俺は刀を握り直し、仲間たちと肩を並べる。
静寂を破る戦いの幕が、いま開こうとしている。
評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!
初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




