表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
犬と猫に振り回される領主兼冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

153/271

静水に潜む影

とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。

蒼晶の眠る洞 第25層手前


 風の層を越え、水脈の層をも突破した俺たちは、緩やかに下る通路を抜けた。湿気の多い空気がすっと消え、足元の水気も乾きはじめる。


「……ここ、変ね」

 アリアが髪を払いながら周囲を見回す。


 洞の一角に、ぽっかりと広い空間があった。湿り気は残っているが、床は平坦で水脈も走っていない。苔の光も安定していて、まるで「ここで休め」と言わんばかりだ。


「安全地帯、か」

 俺は刀を軽く振って水滴を払う。


「ようやく腰を下ろせるわけだ」

 アリアが双剣を背に納め、両腕をぐーっと上へ伸ばす。ぱき、と肩から軽い音がした。

「ワン」

 アージェが鼻を鳴らし、床に伏せる。銀毛を揺らしながら尾を打ち、ようやく緊張を解いたらしい。

「ニャ」

 ノクスは影から滑り出てきて、そのまま毛繕いを始めた。尻尾を左右に振り、こちらの様子をちらちら伺う。




「腹ごしらえだな」

 俺は《無限収納》に手を入れ、布包みを取り出した。中から現れたのは、燻製肉を挟んだ厚切りサンドと、干し茸と根菜を煮込んだスープ。そして、果実を細かく刻んで練り込んだ焼き菓子。


「……なにこれ、豪華じゃない」

 アリアが目を丸くした。

「昨日まで硬いパンと干し肉ばかりだったのに」


「そりゃ、節目の前くらいは贅沢してもいいだろ」

「ずるいわ。最初から持ってたのね」

「タイミングを見て出すのが演出ってもんだ」

「演出で食べ物を隠すな!」


 文句を言いながらも、アリアはスープをすくい口に運んだ。湯気に顔をほころばせ、しばらく黙ったあとで小さく呟く。

「……美味しい。疲れが抜ける」


「ワン!」

 アージェがすぐに欲しそうに鼻を鳴らす。尾をばたばた振って、前足で地面をかいた。

「少しだけな」俺がサンドを差し出すと、幸せそうに噛みしめる。顎の力が強すぎて、パンが一瞬で消えた。

「ニャッ」

 ノクスは焼き菓子に前足を伸ばし、器用につまんで口に運ぶ。喉をゴロゴロ鳴らしながらこちらを見上げ、勝ち誇ったように座り直した。


「ふふ……ほんと、こういう時間って大事ね」

 アリアが頬を赤らめながら弓紐を締め直す。

「戦いの前に、ちゃんとお腹いっぱいになれるなんて、ちょっと冒険者っぽい」

「冒険者っぽいって何だよ」

「わかるでしょ? “命のやりとりと、温かいご飯はセット”ってことよ」

「……説得力あるな」


 俺もスープを口に運んだ。しみる。胃の底に火が灯るようで、疲労がふっと薄れていく。




 食器を片付け、装備を締め直してからふと気づいた。

「……静かだな」

 思わず呟き、耳を澄ます。


 二十四層では絶え間なく響いていた水音が、この空間には一滴も届かない。苔の揺らぎすらなく、あまりに不自然な静けさ。空気が凍りついたようだった。


「次が二十五層……節目よね」

 アリアの声がやけに大きく反響する。

「ああ。ボスがいる。これまでとは違う」

「ワン」アージェが低く唸る。

「ニャ……」ノクスの毛も逆立っていた。


 通路の奥。

 下へと続く階段が黒く口を開けている。青白い苔の光は途中で途切れ、その先は闇。


「……嫌な気配だ」

 俺は刀の柄に手を置き、仲間を見た。

「準備は?」

「万全」アリアが矢筒を背にかけ直す。双剣も腰に下げている。

「ワンッ!」

 アージェは障壁を薄く展開し、今にも飛び出せる構えを取った。

 ノクスは床の影に体を沈め、瞳だけを青く光らせる。


 俺たちは視線を交わし、同時に階段を下りはじめた。



25層の広間


 足を踏み入れた瞬間、湿気が全身を包んだ。


 天井の高い広間。床一面が濁った水に覆われ、中央に巨大な溜まりを形成している。水深は浅そうに見えるが、奥は暗くて底が見えない。


 苔の光は壁際だけをかすかに照らし、水面は黒に近い色をしていた。息を吸うだけで、肺に冷気が沈むような圧迫感がある。


「……水音が、しない」

 アリアが囁いた。


 これほど広い水場なのに、滴の音ひとつしない。波紋すらなく、鏡のように平らな水面が広がっている。


 その静止した水の底で、何かが動いた。




「今……揺れた?」

 アリアが弓を構える。

「気のせいじゃない」

 俺は刀を抜き放った。


 水面の奥、闇の中で巨大な影がゆっくりと蠢いている。形は掴めない。ただ確かに、岩のような塊が沈み、そして移動していた。


 水は音を立てないのに、胸の奥に響く低いうなりだけが伝わってくる。


「ワルルル……」

 アージェが牙を剥き、障壁を広げる。

「ニャアッ……!」

 ノクスも背を丸め、毛を逆立てた。


「まだ出るな。動きを読め」

 俺は仲間を制し、影に目を凝らす。


 広間の中心。黒い影がひときわ大きく揺れた。水面が波立ち、わずかに泡が上がる。


 その瞬間、背筋に冷たいものが走った。

(いる……これは、ただの群れじゃない)


 二十五層の主が、この水の底で待っている。




「来るぞ」

 俺が声を落とした瞬間、水面がぐらりと歪んだ。


 濁流が広間いっぱいに広がり、光が千切れて消える。

 巨大な何かが、底から浮かび上がろうとしていた。


 俺は刀を握り直し、仲間たちと肩を並べる。

 静寂を破る戦いの幕が、いま開こうとしている。

評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!

初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。

AIをとーても使いながらの執筆となっております。

あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ