流れを掴む者
とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
蒼晶の眠る洞 第24層
湿った空気が肌に貼りつく。細い水脈が床石を縫い、青苔の光が水面に揺れて天井へ跳ね返っていた。
「……声、届くな」
「やっと普通に喋れるのね。助かる」アリアが肩をほぐす。
「ワン!」アージェが軽く吠え、ノクスが「ニャ」と短く応じた。
最初の溝を跨いだとき、水面がばしゃりと弾けた。
艶やかな黒鱗、左右に薄いひれ、口内に刃のような水を渦巻かせた細身の蛇が飛び出す——水刃蛇。
「来る!」
アリアの一射は水面で屈折し、蛇の首をかすめて岩にカンと跳ねた。
「くっ、狙点が狂う……ここは——」
アリアは弓を背に回し、背の鞘から薄刃の双剣を引き抜いた。
「弓より剣ね。切り替える!」
刃が交差し、水飛沫を十字に断つ。跳び上がった一体の顎を片方で弾き、もう片方で喉を斜めに裂いた。
「下だ、潜る!」
アージェの障壁の縁をするりと潜ろうとした個体は、床すれすれに下げられた膜に鼻先を弾かれ、体勢を崩す。
「ワンッ!」
アージェが肩で押し、蛇体が岩壁へドンと貼り付いた。
「影が二重……反射で距離が嘘をつく」
ノクスが耳を伏せ、揺らぐ水面ではなく床に落ちる黒い“濃い影”へ視線を固定する。
「流れを“見せる”。あの溜まりの上流へ散らす」
俺は砕いた苔粉を水へ投じた。薄青い粒が水を吸い、糸のような線となって流速と渦を描く。
「見えた……! 水の流れの外側に撃てば、矢が曲がって当たる!」アリアが息を詰める。
「アージェ、障壁は床ぎりぎりで! ノクス、水に浮いた光の帯を目印に背後へ回れ!」
「任せて」「ワン」「ニャ」
次の一体、アリアの右剣が顎を押し上げ、左剣が頸椎を断つ。
別の一体は膜に弾かれた肩口を、俺の刃が浅く抉る。血と水が混じり、墨の筋が溝を下る。
ノクスは線から線へ跳び、背面から尾で喉を薙いだ。
「テンポは掴めた。数で来るぞ!構え直せ!」
「了解!」
水面がざわと波立ち、三方の溝から同時に飛沫が上がる。
アリアが一歩踏み込み、低い姿勢で連続斬
払う・突く・返す
水飛沫ごと敵の顔面を切り割り、追撃の突きで中枢を貫く。
アージェは障壁の角を立て、左右に振るいながら突っ込む個体の鼻先を順に弾く。弾かれた瞬間に肩で押し、岩へ叩きつける。
ノクスは濃い影の上だけを踏み、天井から滴の線を伝って落ちてきた一体の背へぴたりと着地、尾で延髄を断った。
「あと二!」
「右は任せて!」アリアがすれ違いざまに剣先を滑らせ、魚体の腹を横一直線に割る。
最後の一体は流れに沿って俺の足元を狙ってきた。刀を水平に構え、流れを横切るように体を半身へ。水圧で重くなった突進をいなして頸の後ろへ刃を落とす。短い痙攣とともに沈黙。
静けさが戻る……が、長くは続かなかった。上流側の薄闇がぐらりと歪み、溜まりの中央に円の波紋が幾重にも重なる。
「嫌な音!お出ましだ!」
水底が膨らみ、巨体が水膜を破って姿を現した。ひれは扇状に広く、鱗は灰銀。体表の水が常に外へ流れ出し、小さな流れを四方へ生む。
水脈王蛇。群れを束ねる親玉だ。
「アリアは剣。ノクスは背面。アージェ、俺の前を一歩だけ空けろ。流れを作らせない」
「了解」「ニャ」「ワン!」
王蛇が水面ごと前方へ押し出す。小さな波が一斉に重なり、こちらの足元を取ろうとする。
「下がるな、膝は抜く!」
アージェの障壁が斜めに立ち、押し寄せる水塊を割る。割れた二筋の流れの“谷”へ王蛇が身体を差し込む。早い。
「頭が来る!」
アリアが飛び込み、右の刃で顎を押し上げ、左の刃を咽喉の柔らかい溝へ差し込むが、厚い鱗に滑らされ、浅い切創で止まる。
「硬いっ……!」
「無理に貫くな、姿勢だけ折れ!」
アリアが即座に切り上げの角度を換え、顎を大きく開かせる。露出した口腔の渦、あの“水の刃機構”を止める必要がある。
「ノクス、背のひれ根元!」
「ニャッ!」
ノクスが濃い影から跳び、ひれの基部へ尾を突き立てる。ひれの可動が止まり、周囲の小流が一瞬だけ乱れた。
「今、流れが緩む!」
俺は苔粉を広めに撒き、面で流れの地図を出す。王蛇の周囲に三つの渦と二つの“穴”
「左の穴へ落とす。アージェ、角をそこへ。アリア、その穴の縁で“引け”。ノクスは尻尾を切って回転を止めろ!」
「ワン!」「任せて!」「ニャ」
アージェの障壁が“穴”の縁へ押し当てられ、王蛇の頭がそこでわずかに沈む。アリアはその縁で剣を引き斬りに切り替え、鱗の向きを逆手に取って装甲の隙を広げる。
ノクスは尾の付け根に回り込み、刃のような尾を斜めに切断。王蛇の体幹がぐらと揺れ、流れの制御が目に見えて鈍った。
「頭、落ちた!」
「押す!」アージェが吠え、角張った膜で王蛇の首の付け根を押し潰す。水の刃の渦がしぼみ、口内の光が消えた。
「トリス!」
「取る!」
俺は流れの“谷”を二歩で跨ぎ、刃の角度を半度だけ寝かせて袈裟懸け。鱗の向き、筋肉の走り、水圧の抜け。全部が揃う一点。
ズバァッ!
硬い感触の直後、抵抗がほどける。王蛇の頸が深く割れ、水がどっと吐き出されるように溜まりへ崩れ落ちた。
残った小型の蛇たちが一瞬ためらい、次いで一斉に流れの下へ逃げ込む。
水面はほどなく落ち着き、苔粉の光が淡く帯を描きながら、下流へと消えていった。
「終わった……な」
息を吐く俺に、アリアが双剣を払って水を落とす。
「弓は封印、正解だったでしょ」
「最初の二射で“無理”を確認できたのは良かった。切り替えが早い」
「ワン!」アージェが前足で床を二度叩き、誇らしげに胸を張る。
「ニャ」ノクスは切り落とした尾の断面をつん、と爪でつつき、満足げに目を細めた。
「この層は“見えない流れ”が敵だった。苔粉で見える化、障壁は床ぎりぎり、そして武器の切り替え、みんなにも伝えないとな!」
「うん!」アリアが頬の雫を拭い、双剣を背へ戻す。
水脈の音が静かに続く。苔の帯はまだ奥へ伸び、光は細くなりながらも切れていない。
「進もう。二十四層は突破だ」
俺たちは濡れた足音を重ね、次の流れの先へと歩を進めた。
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




