蒼晶の光、映す夢
討伐報告を終えてなお、街の広場はざわめきに包まれていた。
《叡記》でまとめた討伐記録が板に張り出され、人々が食い入るように見ている。子どもたちは口々に「もっと見たい!」「冒険の続きも!」と声をあげ、老人たちも「若い頃を思い出すわい」と頷いていた。
俺はその熱気を受け止めながら、無意識に口を動かしていた。
「……テレビ……スクリーン……光……波長……」
「トリス?」
隣からフレイアが問いかける。炎のように澄んだ瞳がこちらを見つめている。
「蒼晶を、本当に鑑定したことは?」
「……等級くらいだな」
「なら、もっと深く見て」
彼女の指先に炎が灯る。淡い火が蒼晶の欠片を透かし、青白い光が揺らいだ。
《真鑑定》を展開すると、その内部で光が屈折し、干渉し、複雑に乱れているのが見える。
その瞬間、前の世界の記憶が脳裏をよぎった。
白いスクリーン。ガラスのプリズム。理科室に並んだ三角柱。教科書に踊る「波長」「干渉」の文字。
(……そうか。揺らぎを整えれば、像になる……!)
「……映像を結ぶには、この光を導く石が必要だ」
気づけば声に出していた。
フレイアはすぐに頷いた。
「正解よ」
アリアが驚きの表情を浮かべる。
「フレイア、なんでそんなことまで……?」
フレイアは軽く笑みを見せた。
「旅をしていた頃、似た石を見ただけ。……ただの偶然よ」
⸻
「石が要るなら、その名も知っておくべきね」
ミーナが一歩前に出た。眼鏡の奥の瞳が真剣そのものだ。
「おそらく光を導く石なら導晶石。文献で読んだことがあるわ」
「導晶石?」
ミーナは指を折って特徴を挙げていく。
「一つ、夜でも淡く青白く光ること。
二つ、冷たいのに、なぜか手にすると温もりを感じること。
三つ、地脈や水脈に近い場所で見つかること。ラッキーなことに、モルネルがそんなの掘り出したって聞いたことあった気がするわ」
俺たちは思わず顔を見合わせた。
「モルネル……やっぱりあいつか」
爺ちゃんが顎髭をなで、にやりと笑った。
⸻
「確認しよう。《情報網》!」
俺はスキルを発動した。
瞬時に広がる意識の網が、領民や冒険者の声を拾い上げていく。
「畑を耕してたら、夜なのに光る石を見つけた」
「泉の近くで掘ったら、手にした瞬間、胸の奥が温かくなった」
「モルネルが土を掘った跡から、不思議な石が転がってた」
断片的な証言が次々と脳裏に流れ込み、同時に仲間の頭にも共有されていく。
「……全部、一致してる」
アリアが唸り、ミーナが強く頷いた。
「やっぱり導晶石。間違いないわ」
⸻
「もるー!」
その声に振り返ると、裏庭から子牛ほどの幼聖獣が駆けてきた。丸っこい体に愛らしい瞳。子どもたちが「モルネル!」と抱きつくと、楽しげに転げ回り、淡い光で擦り傷を癒していく。
「ほんとに街の守護神だな」
俺が呟くと、アリアが口元を緩める。
ノクスは影から耳をぴくぴくさせ、アージェは鼻を寄せて鳴いた。モルネルは「もるっ」と鳴き返す。
完全に、みんなのアイドルだ。
⸻
「モルネル。この石を探してほしい」
俺は《情報網》で整理した特徴を伝えた。
「青白く光って、冷たいのに温かい、不思議な石だ」
「もるっ!」
モルネルが元気よく鳴き、短い脚で駆け出す。
案内されたのは穀倉街の畑の端。モルネルが前脚で柔らかな土を掘り返すと、青白い光が土の奥から滲み出した。
「……導晶石!」
俺は息を呑み、《真鑑定》を走らせる。
――――――
【鑑定:導晶石】
効果:蒼晶の揺らぎを安定化。映像を結ぶ補助材。
――――――
「これで……映像を形にできる!」
胸が熱くなる。
ミーナが感嘆の声を上げた。
「資料でしか知らなかったけど……本物は美しいのね」
フレイアは炎の瞳を細め、「ようやく一歩ね」と静かに呟いた。
⸻
モルネルは胸を張って「もるぅ!」と鳴き、子どもたちに抱きつかれている。
その姿はまさに守護神、そして街のアイドルだった。
導晶石の青白い光と子どもたちの笑顔。
それを見つめながら、俺は強く思う。
(……これが、この領地の未来を映す光だ)
次の舞台は鍛冶場。夢を形にするための試行錯誤が始まる。
評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!
初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




