影と壁、連携の拍子
とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
蒼晶の眠る洞 第十七層
十七層に降りた瞬間、湿った霧が足首に絡みついた。
通路は複雑に折れ、苔の光は弱々しい。声を出せば霧に吸われ、反響すら残らない。
「……声は抑えろ。気配を拾われる」
俺が告げると、アージェが鼻を鳴らして前へ出た。銀毛が霧に溶け、獣の勘で風を測る。ノクスは影に沈み、瞳を細く光らせる。
アリアは二刀を構え、弓の紐を緩めた。
――カサ、カサッ。
霧の奥、岩を擦る細い脚の音。数が多い。両側、天井からも。
「来るぞ。毒牙蜈蚣だ」
黒緑の体節が霧を割り、毒に濁った顎がぎちりと鳴る。
節ごとの甲が脈打つたび、毒気が漂った。
「正面は俺とアージェ! アリアは右、ノクスは背後を突け!」
「了解!」
「ニャッ!」
アージェが咆哮と共に障壁を張り、迫る顎を弾き返す。俺はその隙に刃を突き込み、継ぎ目を断った。一本が痙攣して崩れる。
アリアは右通路へ跳び込み、速剣で脚を切り、重剣で顎を叩き落とす。矢が閃き、奥から伸びる個体の頭を射抜いた。
ノクスは影から喉を裂き、体液が霧に滲む。
「後ろもだ!」
振り返った瞬間、背後の分岐を大群が埋め尽くした。
通路を埋める数、数十は下らない。
「隊形を菱形! 俺とアージェが先端! アリア右! ノクス左!」
「了解!」
「ワン!」
「ニャ!」
狭い通路で押し返す。
アリアの刃が脚を断ち、ノクスの爪が影から心臓を突く。アージェが重さを受け止め、俺はその合間に首を落とす。
だが敵は壁を這い、天井からも襲ってきた。
「上だ!」
アリアの矢が亀裂の影を撃ち抜き、俺は蹴りで弾く。アージェは肩で別の個体を潰す。
「抜け道を作る! 右へ!」
全員が一斉に動く。ノクスが影で追撃を止め、アリアが脚を射抜き、アージェが最後尾を受け止めた。
だが前方の床が膨れ上がった。
「罠型だ! 床下から来る!」
石が弾け、蜈蚣が群れごと噴き出す。
正面突破は無理――。
「アリア、俺の左を使え!」
「任せて!」
俺が刃で空間を切り開き、アリアが飛び込む。二刀が扇を描き、霧が裂ける。その瞬間、矢が三本立て続けに走り、群れの中心を射抜いた。
ノクスが影から急所を断ち、アージェが俺の背で圧を伝える。合図――「押せ」。
「一気に突破!」
四人の動きが重なり、敵列が崩れた。
やがて霧が薄れ、息がしやすくなる。毒の匂いも遠のいた。
「……ふぅ」
アリアが二刀を拭い、矢を収める。視線が合う。言葉はいらない。十六層で掴んだ“切り替え”が、今は連携として機能していた。
ノクスが喉を鳴らし、アージェが鼻で俺の手を押した。
「まだ奥に“核”がある。今のは迎撃だ」
耳を澄ますと、低い振動が霧の奥で続いている。
「本番ね」
アリアが弓を握り直す。
「隊形は維持。アージェは正面で点を押さえろ。ノクスは俺の影に合わせろ。アリアは矢で隙を作れ。俺が斬る」
「了解!」
「ワン!」
「ニャ!」
進んだ先は広間だった。床は割れ目だらけで、下に黒緑の波が蠢く。中央の柱には、束ねられた胴――核。
その振動に合わせ、周囲の群れが同じ動きで突撃してくる。
「動きは四拍。二で脚、四で顎」
「じゃあ二で止めて、四で縛る!」
石を滑らせると、わずかにリズムが乱れた。
「今!」
アリアの矢が脚を縫い、顎を叩く。俺は刃を継ぎ目へ滑り込ませ、ノクスが心臓を裂き、アージェが核の動きを止めた。
広間全体が乱れ、群れの統制が消えた。
「ここで畳むぞ!」
俺の号令に合わせ、アリアが右から切り裂き、ノクスが影から背を貫き、アージェが正面を抑える。俺はその全ての隙間を拾って首を落とした。
――静寂。
苔の青が戻り、割れ目の蠢きは痙攣に変わる。
「終わったわね」
アリアが額の汗を拭い、二刀を収める。
「十六層よりも、ずっと噛み合ってた」
「全員の動きが繋がった。次もこれでいく」
俺は頷き、刀を納める。
毒牙蜈蚣の群れを掃討し、霧が薄れ、苔の光が安定しているのに気づいた。床に刻まれた割れ目も静まり返り、どこからも音はしない。
「……ここ、安全地帯だな」
俺が壁を撫でると、苔がほのかに青白く光った。湿気の流れもない。ここだけは迷宮が“眠って”いる。
「助かったわね。正直、霧で頭がくらくらしてたのよ」
アリアが二刀を拭いながら、背の弓を外して壁に立てかける。
額の汗をぬぐってから、肩をぐるぐる回して苦笑した。
「霧に毒気、しかも四方八方から襲われるとか……冒険者泣かせすぎだろ」
俺は刀を収めて腰を落ち着けた。
「でもまあ、トリスが指揮官してると“負ける気はしない”ってのが悔しいところね」
「それ褒めてるのか、皮肉なのかどっちだよ」
「両方!」
アリアがにやりと笑う。
「ワンッ」
アージェが鼻先で俺の腕を突き、まるで「お前も褒めろ」と言わんばかり。
「はいはい、よく耐えてくれた。お前の壁がなかったら俺の首は今ごろ無い」
撫でると銀毛の狼は満足げに尾を振った。
「ニャア」
ノクスが肩に飛び乗り、尻尾で俺の頬を叩いてくる。
「お前もだ。あの急所狙い、あれで数が一気に減った」
すると喉を鳴らして得意げに目を細めた。
「ふふっ、ほんと仲間思いね。……よし、じゃあ休憩ついでに温泉アントの卵でも焼く?」
アリアがふざけて提案した。
「やめろ! この湿気の中で匂い立てたら、また別の群れが寄ってくる」
「ちぇっ、せっかくいい炭火ポイント見つけたのに」
「どこがだよ。毒蜈蚣の死骸だらけだぞ」
笑いながらも、自然と肩の力が抜けていく。
アリアは弓紐を締め直し、アージェはその足元に伏せ、ノクスは俺の肩で丸くなった。
深層へ降りるには、こういうひとときが必要だ。
緊張を解き、呼吸を揃え、また次に備える。
「よし……ひと息ついたら、十八層だ」
「次は、どんな層だっけ? もう嫌な予感しかしないんだけど」
「安心しろ、嫌な予感しかしないのは俺も同じだ」
「全然安心できないんだけど!」
アリアのツッコミに、俺は思わず笑ってしまった。
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




