ドランベル来訪 ― 鍛冶は炎と湯けむりの中で
テルマハルト温泉街に新しい噂が広がっていた。
「湯に惚れた変わり者のドワーフ爺さんがやってきた」と。
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温泉街の宿にて
「ふぃ~~~、極楽、極楽じゃあ!」
豪快な声とともに、湯けむりの中で白い髭が揺れる。
小柄な体にどっしりした腹。頭頂はすっかり薄いが、その代わりに背中には大きな鉄槌。
ドワーフの老人ドランベルだ。
「……ほんとに湯に浸かるために来たのね」
アリアが呆れ半分、笑い半分で言う。
「そりゃあ当然じゃろ! 儂の里では湯が枯れて久しい。噂を聞いて飛んできたわい!」
髭を撫でながら、ドランベルは湯船を叩いた。
「しかもここの湯は、ただの湯じゃない。鉄を柔らかくする気配がある。……鍛冶に使えるかもしれん」
「温泉と鍛冶?」アリアが首をかしげる。
「面白い発想ね」ミーナが帳簿を閉じて笑った。
「ただの温泉好きじゃなさそうだわ」
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後日、ドランベルを領主邸に招いた。
机の上には、カインが打ったばかりの剣が並んでいる。
「これが……お前さんの鍛冶か」
ドランベルが剣を手に取り、刃を撫でた。
そして豪快に笑う。
「ふん……若いのに、いい“癖”をしとる!」
「癖?」カインが目を丸くする。
「そうじゃ。普通の鍛冶は“形”を揃える。だが、お前の鍛冶は違う。一本一本が“意思”を持っとる」
カインは頬を赤くして鼻をかく。
「へへっ……俺は量産って柄じゃねぇ。一点物しか作れねぇんだ」
「量産など儂も嫌いじゃ。職人は作品に魂を込めてなんぼじゃろうが!」
ドランベルの声が響き、カインの目が輝いた。
「……爺さん、あんた最高だ」
「ほっほっほ、儂を褒めても何も出んぞ。ただ、鍛冶の流儀くらいは教えてやってもいい」
「ほんとか!?」
カインが乗り出す。
「ただし! 儂は師じゃない。弟子を取る歳じゃもうないしな」
ドランベルは酒瓶を掲げてにやりと笑った。
「お互いを鍛え合う“盟友”じゃ。それでどうじゃ?」
「上等だ!」
カインとドランベルが、分厚い手と手を固く打ち合わせた。
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翌日。
ハルトンの鍛冶場には、早くも二人の怒号と笑い声が響き渡った。
「そこは叩きすぎじゃ! 金属が怒っとる!」
「うるせぇ! 俺の槌筋に口出すな!」
「じゃがその歪みは明日折れるぞ!」
「なら直してみせろよ!」
火花が散り、湯気が立ち込め、二人は大汗をかきながら鉄を打ち続ける。
アージェは心配そうに首をかしげ、ノクスは影に隠れて見守っていた。
「……喧嘩してるのか仲良いのか、わからないわね」アリアが苦笑する。
「どっちも正しいのよ」ミーナが冷静に言った。
「互いに足りないものを埋め合ってる。ああいう相乗効果が、街を強くするの」
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鍛冶場を抜けたドランベルは、また湯に浸かっていた。
「ふぃ~~~、やはり風呂はいい! 湯があると、槌の切れも違うんじゃ!」
「それ、気のせいじゃないの?」アリアが呆れる。
「いや、本当だと思う」俺は笑った。
「温泉に含まれる鉱物が、鉄の性質に作用しているのかもしれない」
「領主よ」ドランベルが湯から顔を出し、真剣な目で言った。
「この温泉と鍛冶を組み合わせれば、ここはただの都市では終わらん。“武具と湯の都”にもなるぞ」
その言葉に、俺の胸が高鳴った。
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こうしてドランベルは、正式にトリス領の技術顧問となった。
古き鍛冶と新しき鍛冶が出会い、互いに火花を散らしながら街を鍛え上げていく。
「……また街が一歩、強くなったな」
「そうね」アリアが微笑み、アージェとノクスが寄り添ってきた。
「ニャ」「ワンッ」
俺は仲間たちの顔を見渡し、拳を握る。
(強さは剣だけじゃない。街を支えるすべてが力だ――)
炎と湯けむりの中、トリス領は新たな柱を得たのだった。
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




