情報網の糸口 ― 初心者殺しの真相
巨亀の咆哮が洞窟を震わせた。
低音の波が耳の奥を打ち、岩盤が軋み、天井から粉がぱらぱらと降る。
甲羅に刻んだはずの傷は。
「……もう塞がってる……」
アリアが矢を握り直し、苦悶の声を漏らす。
銀の守護犬アージェは唸り、影猫ノクスは身を伏せ、爪を小刻みに鳴らしている。
頼もしい二匹ですら、この巨体に圧されているのが分かった。
(ただ硬いだけじゃない……こいつは“絶望”を植え付ける存在だ)
ギルドの掲示板で見た文字が脳裏にちらつく。
「第十五層の守番は《初心者殺し》」
CランクやBランクのパーティが、ここで何度も壊滅したという。
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「どうする、トリス……」
アリアの声がかすれていた。
俺は深呼吸し、意識を切り替える。
ここで怯えれば、俺たちも同じ末路を辿る。
「【情報網】……展開」
光の糸が脳裏に走り、点在する情報を結びつけていく。
ギルドで聞いた噂、仲間の言葉、古参冒険者の愚痴。
一つ一つが繋がり、輪郭を描いていった。
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◆《受付嬢の記録》
『ストラタタートルは甲羅を砕いても再生するんです。新米たちは“倒した”と思って油断する……その隙に押し潰されるんです』
◆《酒場の古参冒険者》
『核は右足の付け根だ。だがな、そこは常に甲羅で隠れてやがる。魔法や精密射撃がなけりゃ狙えねえ。剣や槍じゃ届かねえんだよ』
◆《ギルド長の忠告》
『奴は“音”を利用している。咆哮と転がる地響きが共鳴を生み、再生を加速させる。音を止めなければ、いくら削っても意味はないぞ』
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「……そういうことか」
「トリス?」
アリアが振り返る。
「核は右足の付け根にある。場所は知られてる。だが、狙えない。音の共鳴で再生されるからな……」
「音を止める、ってことね?」
「そうだ。奴の咆哮を封じるんだ」
⸻
巨亀が再び甲羅に身を縮め、岩盤を砕きながら転がり始める。
轟音が押し寄せ、地面が揺れた。
「アージェ!」
「ワオオオオオンッ!!」
アージェが躍り出て、障壁を二重に展開。
巨体の突進を真正面から受け止めた。
――ガァァァァンッ!!!
火花と粉塵が散り、アージェの爪が岩に食い込み、後脚が震える。
それでも吠え、踏みとどまった。
「よく耐えた、アージェ!」
⸻
「ニャアッ!」
ノクスが影から飛び出し、背後へと走る。
黒い残像を残し、巨亀の後脚に爪を叩き込んだ。
ガキィンッ!
甲羅に弾かれるが、そこには確かに小さな亀裂が走った。
「効いてる!」
俺が叫ぶ。
ノクスは影に逃れ、尾の一撃を回避する。
⸻
「アリア!」
「任せて!」
蒼光を帯びた矢が弧を描き、ノクスの作った亀裂。
ドガァァァァンッ!!
結晶が砕け、巨亀の咆哮が一瞬途切れる。
その一瞬の静寂に――。
右前脚、甲羅の隙間から、淡く青白い光が漏れ出した。
(あれが……核!)
⸻
だが、巨亀の咆哮が再び洞窟を震わせる。
光はすぐに結晶に覆われ、塞がっていく。
「……まだ音が邪魔してる!」
俺は歯噛みした。
再生のたび、仲間たちが削った努力が無に帰る。
だからこそ、多くの冒険者が絶望したのだ。
⸻
その瞬間、情報網がもう一つの映像を見せた。
過去、十五層で散った冒険者たち。
剣士が斬りかかり、槍兵が突き立て、魔法使いが炎を浴びせる――。
だが核を貫けず、咆哮の度に再生され、やがて押し潰された。
『……倒せるはずだったのに……核さえ狙えれば……』
断末魔の声が脳裏に響き、俺は奥歯を噛みしめた。
(違う。俺たちには、アリアがいる。精密射撃で核を狙える唯一の仲間だ)
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「アリア! 次の咆哮で喉を狙え! 音を封じれば、核を出せる!」
「……分かった!」
アリアの目に決意が宿る。
アージェは銀壁を展開し、ノクスは影を舞う。
俺は刀を握り、再び突進してくる巨亀を睨み据えた。
(次だ……次で、核を暴き出す!)
巨亀の赤い瞳が光り、咆哮の準備を始める。
俺たちは息を合わせ――決戦の瞬間を迎えた。
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




