ドワーフの元気な?おじいちゃん
転送陣を抜け、俺たちは蒼晶の街ハルトンダンジョン都市の広場に姿を現した。
十層の節目を突破した腕輪が光を放ち、周囲の視線を一気に集める。
「おおっ……!」
「十層だ! 領主様が十層を突破したぞ!」
「見ろ、犬と猫……いや、進化体!? ユニーク種じゃないか!」
驚きはすぐに歓声に変わり、子どもたちが駆け寄ってきた。
「わぁー! かっこいいワンちゃん!」
「ネコちゃん、影に隠れてる! すごーい!」
「ワンッ!」
アージェが胸を張って吠える。
「ニャア」
ノクスは影を揺らし、子どもたちの足元をすり抜けながら喉を鳴らした。
「きゃー! かわいい!」
歓声に包まれ、広場の空気は一層明るくなる。
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「……やっぱり、あなたは冒険者なんだな」
ミーナが帳簿を抱えながら近づいてくる。
「領主の務めを忘れるな、って言いたいんだろ?」
「それもあるけど」
ミーナは視線を広場に向けた。
「こうして“見せる”ことは、領主として大事なのよ。人は強さを信じ、秩序を信じる」
「なるほどな」
俺はアージェとノクスを撫でながら頷く。
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「領主殿!」「トリス様!」
「十層突破、おめでとうございます!」
「次は二十層だな!」
素直な声援に胸が熱くなる。
「ありがとう。だが、これは俺一人じゃない」
アリアに視線を送ると、彼女は小さく頷き、弓を直した。
「次はもっと見せつけましょう。私たちの力を」
「ワンッ!」
「ニャッ!」
四人と二匹の声に、広場の熱は最高潮に達した。
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その夜、屋敷に戻ると。
「ふぅ……やっと湯に浸かれると思ったのにのう」
玄関先で白い湯気を吐きながら、どっかり腰を下ろしている男がいた。
背丈は俺の胸ほど、丸っこい体に真っ白な髭。
一見ただの老人に見えるが、眼光は妙にギラついている。
「……誰だ?」
俺が思わず警戒すると、老人はきょとんと顔を上げた。
「誰だとは失敬な! ワシはドワーフのドランベル! 鍛冶も工学も任せろ! ……で、温泉はどこじゃ?」
「おい、最後が本音すぎる」
アリアが呆れ顔を見せる。
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「なぜこの街に?」
俺が問うと、老人はにこにこしながら語り始めた。
「そりゃ決まっとる。ワシは若い頃、あちこちの火山に鍛冶修行に行ったんじゃがの。どこも湯が熱すぎるか、硫黄がきついかで、ゆっくり浸かれんかったんじゃ……!」
「温泉目的……?」
「そうじゃとも! 湯の良し悪しを見抜くのも鍛冶の勘じゃ! 聞けばここは湯卵が名物で、温泉まで湧いてると聞く! こりゃもう、移住せんわけにはいかん!」
老人は胸を叩き、さらに叫ぶ。
「ワシをここに住まわせろ! 代わりに! 街の工房も炉も、ぜーんぶ改造してやる! 蒸気炉も水車も、温泉を動力にできるんじゃぞ!」
その声量に俺とアリアが思わず耳を塞ぐ。
「……ほんとに、ただの温泉好きじゃないのね」
「湯と鉄は相性がええんじゃ! 錆を防ぎ、熱を均す。ワシが手を貸せば、この街はもっと繁盛するぞい!」
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その時、ふとドランベルの体が「むくり」と膨らんだ。
筋肉が盛り上がり、丸っこい老人が一瞬でマッチョな戦士のようになる。
「ぬおおおお! 気合が入るとこうなるんじゃあ!」
豪快に笑い、ポーズを決める。
「……反則でしょ」
アリアが呆れ半分でつぶやく。
「元気すぎるおじいちゃんね」
ミーナは苦笑しながらも、目を輝かせていた。
「でも、工学技師としても鍛冶師としても優秀そう。領に迎える価値は大きいわ」
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「……トリス、決めて」
ミーナに促され、俺は老人に向き直った。
「条件は一つ。この街を豊かにするために、その力を貸してほしい」
「任せておけ!」
老人いや、筋肉ドワーフのドランベルは、胸を叩いて快活に笑った。
「ワシは温泉に浸かり、火を愛し、鉄を打つ! それが生涯の喜びじゃ! この街は気に入った! 骨を埋めるつもりで働いてやろう!」
「……ようこそ、ドランベル」
「ワン!」
「ニャー!」
アージェとノクスまでもが尻尾を振り、歓迎の声を上げた。
⸻
こうして俺たちの街に、新しい仲間――温泉狂いで天才肌のドワーフ爺ちゃんが加わった。
彼がどんな騒ぎを起こすかは、まだ誰にも分からない。
だが間違いなく、この街をさらに面白くしてくれるだろう。
(十層を超え、街も仲間も進化していく)
(次は二十層、そしてその先へ――)
評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!
初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




