アージェとノクス従魔登録
陽が傾き始めたころ、俺とアリアはギルド支部へ戻った。
そして俺の両脇には銀毛の《アージェント・ガーディアン》、肩には影を纏った《ノクス・フェリス》。
「……なあトリス」
アリアが苦笑いを浮かべる。
「どう考えても“ただの浅層の依頼帰り”には見えないんだけど」
「気のせいだ」
「いや、全然気のせいじゃないわ」
俺たちが扉を押し開けた瞬間
「「「……っ!?」」」
冒険者たちの視線が一斉に突き刺さった。
酒場スペースにいた新人も古参も、皆ぽかんと口を開けている。
「おい、あれ……《シルバー・ハウンド》じゃねえか? いや、違う……進化体か?」
「肩の猫……影を纏ってる? 《シャドウ・リンクス》の上位種か?」
「待て、領主達は浅層に行ってたんだろ!? なんでそんなのを連れてんだよ!」
ざわめきが一気に広がった。
⸻
受付へ向かうと、対応した受付嬢が目を丸くする。
「と、トリスさん……これは」
「依頼中にテイムした。登録を頼む」
「テイム……で、ですか?」
俺は冒険者カードを差し出す。
受付嬢が震える手で魔石に通すと、淡い光が二匹を照らした。
――――――
【登録:アージェント・ガーディアン(犬型ユニーク)】
【登録:ノクス・フェリス(猫型ユニーク)】
備考:いずれも進化個体。契約者:トリス=レガリオン。
――――――
「……っ! 正式に登録されました!」
受付嬢が叫んだ瞬間、周囲がさらにざわつく。
「ユニークを二体同時に……しかも浅層で? 嘘だろ」
「テイマー職か? いや、剣士だろ領主様……」
「領主のくせに冒険者で、ユニーク種の主かよ……」
ざわめきは次第に笑い声と驚愕を混ぜた渦となった。
⸻
「やっぱり普通じゃないわね、あなた」
アリアが肘で小突き、微笑む。
「でも――羨ましいくらい、絵になるわ」
「褒め言葉で受け取っておく」
その時、カウンターの奥からギルドマスターが出てきた。
白髪交じりの大男で、俺を値踏みするように見つめる。
「……トリス。本気で冒険者を続ける気か」
「ああ」俺は迷いなく答える。
「弱い領主でいるつもりはない」
ギルドマスターは数秒の沈黙の後、笑った。
「いいだろう。ならその犬と猫も含めて、お前の冒険が、街の誇りになる」
冒険者たちの間から拍手と口笛が飛び交った。




