自治会議と子爵の誓い
鐘の音が遠ざかり、歓声がまだ広場に残っていた。
俺は深呼吸を一つしてから、屋敷へ戻った。
(……子爵領が“街”になった。4つの街ともだ!)
名誉は手に入った。だが爵位は軽くない。伯爵、侯爵の諸侯に比べれば、俺など未だ端に座る存在だ。
だからこそ――浮かれている暇はない。
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夜。屋敷の会議室。
長机には、四つの街を代表する顔ぶれが座っていた。
•ハルトンダンジョン都市:冒険者ギルド支部長・クローヴェ。
•テルマハルト温泉街:宿屋組合長のエリナ婆。
•ロックハルト森林街:炭焼き親方・バルド。
•グレインハルト穀倉街:若き農場主・クラウス。
アリア、ミーナ、カイン、フレイアも席につき、部屋はぎっしりと埋まっている。
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「まずは……昇格おめでとうございます、領主殿」
クローヴェが真面目な顔で言った。
「だが、ここからが正念場だ。冒険者が急に増え、秩序が乱れつつある。昨日も喧嘩沙汰があった」
「うちもよ」エリナ婆が杖で床を突く。「観光客はありがたいけど、宿が足りなくて困ってる。湯の割り当ても大騒ぎだよ」
「森林も課題だ」バルドが腕を組む。「木材の需要が跳ね上がって、伐りすぎの声も出てる。トレントの件は片づいたが、資源は計画的にいかねえと枯れる」
「農地は豊作続きでいいことだが……」クラウスは苦笑い。「保存庫を増やさなきゃ、腐らせる分が増える一方だ」
一斉に視線が俺に集まる。
(そうだ。街に昇格したからこそ、問題が一気に噴き出す)
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「分かった」
俺は立ち上がり、仲間たちを見渡す。
「三つ、決める」
「一つ。冒険者と村人の秩序を保つため、《統治》と《情報網》で常時監視網を整える。争いは即時裁定する」
クローヴェが頷き、口元に笑みを浮かべた。
「子爵殿がそう言うなら、支部としても協力しよう」
「二つ。宿泊と湯量は、フレイアとエリナ婆に任せる。湯は“皆で分ける”仕組みにする。奪い合う観光ではなく、楽しむ観光に」
「任せなさい!」
フレイアがにやりと笑い、エリナ婆も「骨はあるねぇ」と頷いた。
「三つ。資源と穀物は“長期保管”を前提に。ロックハルトには伐採と炭焼きの調整を。グレインハルトには新しい穀倉を。俺が資金を引き受ける」
バルドとクラウスが同時に身を乗り出した。
「助かる!」「これで農民も安心できます!」
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空気がまとまりかけた時、ミーナが帳面を閉じ、冷静に口を開く。
「ただし、忘れちゃいけないことがあるわ」
「なんだ?」
「子爵、って立場よ」
部屋が少し静まった。
「……王都の噂、もう聞いた。『子爵ごときが街を四つも抱えているのは異常だ』って。伯爵連中がざわついてる」
アリアの眉がぴくりと動いた。
「つまり……潰しに来るってことね」
「その可能性は高い」ミーナが頷く。「今までのように影で仕掛けるだけじゃなく、正面から“格”を持ち出してくる」
フレイアが鼻で笑う。
「格ねぇ。あんたの《統治》と《情報網》があれば、国だろうと揺らせるわよ」
カインが豪快に笑った。
「街の連中はもう見てるぜ。爵位じゃねえ、やったことが全てだってな!」
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俺は机に手を置き、はっきりと言った。
「俺は子爵のままで構わない。だが、領民は伯爵以上の誇りを持てる街を作る」
その瞬間、部屋に拍手が広がった。
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会議のあと、アリアが小声で言った。
「……ねえ、トリス」
「ん?」
「あなた、立派すぎて……時々不安になる」
俺は少し照れながら答えた。
「一人じゃない。アリアがいる。ミーナも、カインも、フレイアも」
「ふふ。そうね」
アリアが微笑むと、フレイアがすかさず笑った。
「はいはい、惚気は後! 子爵殿、夜警の巡回いくわよ!」
皆が笑い、部屋の空気が和らいだ。
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(まだ子爵。けれど、この肩にあるものは、もう誰にも軽んじられてはいけない、もっと俺自身が強くなろう)
俺は夜空を見上げた。
王都の伯爵たちが何を言おうと、この領地は仲間と共に育てる。
ここからが、本当の子爵領主の戦いだ。
評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!
初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




