火種は都へ
数日後の夜。
暖炉の火が静かに揺れていた。俺と仲間たちは屋敷の一室に集まり、村々の報告を終えたばかりだった。
「領地は強くなってきたわね」
アリアが椅子に腰掛け、弓を磨きながら言った。
「薪も炭も、保存食も。どっちも生き抜く力になる」
ミーナが帳面を閉じ、にやりと笑う。
「だが……」俺は深呼吸した。「王都も黙ってはいない。買い占めに失敗し、暗殺も潰された。次は、正面から仕掛けてくる」
「ふん、上等じゃねえか」
カインが斧を壁に立てかけて腕を組む。
「派手に燃やすのも悪くないわね」
フレイアは口の端を上げた。「でも、今度は火じゃなく、“言葉”で戦う番でしょ?」
「ああ」
俺は机に二通の書状を置いた。
「一つは王家監察へ直報する。黒衣商会の買い占めと、マルケス伯の後援状の証拠を送る」
「そして?」ミーナが促す。
「もう一つは王都の市場に。――“テルマハルト温泉卵・正規組合取引”の告知だ」
「おお……」アリアが目を見開く。
「つまり、敵の本拠地で、正面から市場を開くってことね」
「そうだ。俺たちは逃げも隠れもしない。卵も炭も保存食も、“堂々と売る”。その秩序を見せるんだ」
⸻
「……トリスの小僧、やりやがったな」
マルケス伯が机を叩く。頬は紅潮し、酒気を帯びた息が漂う。
「直報だと? 王家監察にまで根回しするとは」
コルナ男爵が鼻声で言い、杯を弄ぶ。
「だが、潰せぬ相手ではない」
レーン子爵が冷静に言った。「市場は我らの庭だ。卵など、所詮は一時の流行に過ぎん」
黒衣商会の主が静かに笑う。
「では、王都市場で“正規の権利”を取らせぬようにする。帳簿の一つでも揺さぶれば、民衆の信頼など崩れる」
「揺さぶり……か」
マルケス伯の目がぎらりと光った。
「なら、やりようはある。正面から奴を出し抜いてやろう」
⸻
数日後。
俺は馬車に揺られ、王都へ入った。
背後にはアリア、ミーナ、フレイア。カインは鍛冶場を任され、領地に残っている。
「久しぶりね、王都」
アリアが街並みを見やり、息をつく。
「空気が重い……」
ミーナの目は商人らしく鋭い。「これは“仕掛け”の匂い」
「上等」
フレイアがにやりと笑う。「私は見物しながら、派手に笑ってやる」
「頼む。俺たちの立場は強いが、敵は“都合のいい噂”で揺さぶってくるはずだ」
俺は拳を握る。
(だが、今の俺には《情報網》がある。どんな噂も、誰が流したかまで拾える)
⸻
監察局
「領主、トリス=レガリオン子爵。直報の件について伺おう」
監察官が冷たい声で告げる。
俺は証拠を差し出した。
暗殺者の装備、黒衣商会の紋章、マルケス伯の後援状。
すべて《真鑑定》で記録したものだ。
「これが暗殺未遂の証拠です」
部屋がざわめいた。
監察官の目が鋭く光り、やがて頷いた。
「確かに……重罪だ。王家への報告に回す」
「……やるじゃない」
ミーナが小声で囁く。
(これで、王家の目は確実に“こちら”に向く。敵の裏は、すでに王に晒された)
⸻
その日の午後。
王都の中央市場に、俺たちの屋台が立った。
「テルマハルト温泉卵! 正規組合品!」
「価格は固定、帳簿公開! 偽物に騙されるな!」
人だかりができる。
蒸気をまとった卵が次々と売れていく。
「うまい……!」
「本物はこんな味なのか!」
群衆の声が熱を帯びる。
⸻
だが、その背後で。
黒衣商会の商人が舌打ちをした。
「……面倒なことになった」
「まだ終わらんさ」
マルケス伯が笑う。
「市場は戦場だ。奴の帳簿を崩せば、正義も崩れる」
――王都と領地、二つの戦いは、今まさに重なろうとしていた。
(来い……次は、“言葉と数字”での戦だ)
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




