スキル変質とハルトン村での朝
暗殺者たちを縛り上げ、屋敷の広間に転がしたあと。
俺は深く息を吐いた――が、胸の奥のざわつきは収まらなかった。
(……なんだ、さっきの感覚は)
戦闘中、《情報網》を詐奪した瞬間、確かに“仲間の視界や経験”が頭に流れ込んできた。
アリアの矢を射る呼吸。フレイアの炎を操る温度感覚。カインの槌を振るう力の重さ。
全部、俺の中に一時的に再現されたのだ。
(ただの伝達じゃない……これは)
試しに《真鑑定》を自分に向ける。
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【真鑑定】
対象:トリス=レガリオン
スキル:《情報網》 Lv6(スーパーレア[変質])
効果:
・知り得た情報を仲間へ即座に言語化し伝達可能。
・仲間が得た情報・感覚・戦闘経験を領主本人に集約可能。
備考:異常魔力量の影響で拡張発動。内政・軍政においても“経験共有”が可能。
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「……やっぱりか」
思わず声が漏れた。
元々はただの伝言板のようなスキルが、俺の魔力のせいで化けていた。
仲間の感覚や経験を“俺のものとして追体験”できる。
それだけじゃない!領民の報告も即座に集約できれば、内政にも使える。
まさに“領主の眼と耳”だ。
「トリス?」
アリアが不思議そうに首を傾げる。
「いや……お前が弓を構えると、その感覚が俺に伝わってきた」
「……はぁ!?」
アリアの顔が一瞬赤くなる。
「そんなの、覗き見みたいじゃない!」
「いや、意図したわけじゃ」
「ふふ、いいじゃない」
フレイアが豪快に笑う。
「それだけシンクロできるなら、戦場じゃ無敵よ」
「……恐ろしいほど便利ね」ミーナが小声で言った。「軍の全員が見た情報を一人に集められるなんて、普通はありえない」
「内政にもだ。領内で何が起きたか、誰が何を見たか、俺に集約できる。動きが一気に早くなる」
カインが頷く。
「戦場じゃ大将、内政じゃ執政官。……両方こなせるってわけだな。トリス、お前、本当に何者だよ」
「ただの領主だ」
そう答えながらも、胸の奥に熱が宿る。
(これは……領地を守り、未来を作るための武器だ)
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鶏の声とともに、村に朝が来た。
屋敷の前に立った俺は、集まってきた村人たちを前に一歩進み出る。
「みんな、昨夜は静かに協力してくれてありがとう。暗殺者は来たが、被害は一切ない。村は無事だ」
ざわっ、と空気が揺れる。
子どもを抱いた母親が胸を撫で下ろし、老人が深く頷いた。
「やっぱり来たんだなぁ……」
「でも、こうして朝を迎えられた」
「領主様がいるって心強いわ」
不安よりも、安堵の色が濃くなっていく。
⸻
「トリス、寝てても指揮できるなんて、人間じゃないわね」
アリアが苦笑混じりに小声で突っついてきた。
「寝てない。演技だ」
「寝顔、ちょっと間抜けだったけど?」
「おい」
フレイアが豪快に笑い、ばしっと背中を叩く。
「いいじゃない。そういう無防備があるから、女は放っとけないのよ!」
「放っといてくれ」
「無理!」
その調子に村人たちまで笑い出し、空気がぐっと和らいだ。
⸻
「さて」
ミーナが帳面を抱えて前に出る。目は鋭く、声は落ち着いていた。
「今回の件、証拠は揃っています。襲撃者の装備、そして後援状。これは領主暗殺を企てた証拠として王家監察に提出します」
「おお……」
「王都に届くのか」
「届きます。トリス様には王に直報できる権限があります。つまり、貴族の裏取引より王の耳の方が早い」
「つまり?」と誰かが問う。
「つまり、敵は後手にまわざるをえない。これからは、書面と秩序でこちらが押し返す番です」
ミーナが力強く言い切ると、村人たちから拍手が沸き起こった。
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「正面から来ても裏から来ても、迎え撃てるってわけだな」
フレイアがにやりと笑う。
「また来るなら、派手に燃やしてやるわよ」
「その時はほどほどに」アリアがため息をつく。
「村が火の海になったら困るから」
「分かってるって。あたしは頭いいんだから」
「誰が?」
「このフレイア様が!」
漫才のようなやり取りに笑い声が広がり、夜の恐怖は跡形もなく吹き飛んでいった。
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俺は村人たちを再度見渡し、空気が変わったのを確認し深く頷いた。
「昨夜、俺たちは“影”を退けた。だが、これは始まりに過ぎない。次は王都から、もっと別の形で来るだろう」
一瞬、場が静まり返る。
だが俺は続けた。
「けれど、恐れる必要はない。俺たちには道があり、そして皆の力がある。だから、この村も、この領地も、必ず守る」
その言葉に声が重なった。
「おおっ!」「領主様!」
歓声が湯けむりのように立ち昇り、ハルトンの朝を包み込んだ。
⸻
群衆が解散し、仲間たちと屋敷に戻る途中。
「トリス」ミーナが歩きながら言った。
「“守る”と口に出した以上、次は“仕掛ける”番よ」
「分かってる。証拠を携えて、王家に直報する」
フレイアが笑う。
「いいじゃない、炎と影の次は、今度は“王宮と商会の攻防”か」
「また忙しくなるな」アリアが弓を肩に掛け直し、少し誇らしげに笑った。
俺は空を見上げた。
(影を払った。今度は――陽の下で勝負だ)
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




