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転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
小さな一歩、大きな始まり

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孤児院の日常

とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。読んでくださる方々ありがとうございます。どうか顔文字の評価ボタンか★マークを押してもらえるとありがたいです。

僕の名前はトリス。

王都の外れにある石造りの古びた孤児院で育った。

親の顔も知らない。持っているのは、この名前だけ。


でも、それでも、生き抜く理由はある。


夕暮れの鐘が鳴ると、子どもたちは食堂に集まった。

長机に並ぶのは、薄いスープと硬いパン。

それでも子どもたちは一斉にかぶりつき、わずかな笑い声をこぼす。


その中で、僕は自分のパンを半分に割り、隣の小さな女の子の皿にそっと置いた。


「……ほら、交換しよ。僕のはこっちで足りるから」

「え? でも……トリスお兄ちゃんのお腹が空いちゃう」

「平気、平気。ほら、こっちの方が美味しいんだって」


恐る恐る口にした女の子は、ぱりっと音を立ててかじり、はにかむように笑った。


挿絵(By みてみん)


その笑顔を見て、シスター・エレナが小さくため息をつく。


「あなたは、本当に優しい子ね」

「……優しいんじゃなくて。交換しただけです」


ぶっきらぼうに答えたけれど、耳の奥が少し熱くなるのを誤魔化せなかった。


やがて食事が終わると、子どもたちは布切れの毛布にくるまり、次々と寝息を立て始めた。


眠れなかった僕は、窓辺に腰を下ろす。夜空には街の灯火と星々が揺らめいていた。


「……綺麗だな」


その小さな呟きは、誰にも届かない。

胸の奥で、燻るような炎が揺れていた。


(僕は、明日の分を少しでも増やしたい。ただそれだけだ……でも、このままじゃ、何も変わらない)


視線を落とすと、古びた上着の裾が目に入った。

布はすり切れ、色も褪せている。けれど、その縫い込みだけは今もはっきり残っている。


「トリス」


小さく、不器用な字で刺繍されていた。


「……僕の名前」


物心がついたとき、シスター・エレナが教えてくれた。

拾われたときに着ていたこの服の刺繍から、俺の名前は決まったのだと。


「じゃあ、これを縫った人は……僕の、家族なのかな」


誰が縫ったのかはわからない。

だが、それだけは唯一無二の「自分の証」だった。


僕は小さく、けれど力強く呟く。


「……僕はトリスだ。絶対に、ここから生き抜いてやる」


翌朝、僕は一人で冒険者ギルドへ向かうことを決めた。


まだ子どもでも、ステータスとスキルを鑑定するくらいは許される。


もし俺に力があるなら

それがどんなものでも、絶対に見極めてやる。


胸の奥で燻っていた炎が、ざわりと揺らめいた。

そのときはまだ知らなかった。

俺が“奪う者”としての宿命を背負っていることを。


応援ありがとうございます!

皆さんのブクマや評価が更新の大きな力になっています!٩( 'ω' )و

「次話も楽しみ!」と思っていただけたら、ポチっとお星★様を押してもらえると嬉しいです!

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