孤児院の日常
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僕の名前はトリス。
王都の外れにある石造りの古びた孤児院で育った。
親の顔も知らない。持っているのは、この名前だけ。
でも、それでも、生き抜く理由はある。
夕暮れの鐘が鳴ると、子どもたちは食堂に集まった。
長机に並ぶのは、薄いスープと硬いパン。
それでも子どもたちは一斉にかぶりつき、わずかな笑い声をこぼす。
その中で、僕は自分のパンを半分に割り、隣の小さな女の子の皿にそっと置いた。
「……ほら、交換しよ。僕のはこっちで足りるから」
「え? でも……トリスお兄ちゃんのお腹が空いちゃう」
「平気、平気。ほら、こっちの方が美味しいんだって」
恐る恐る口にした女の子は、ぱりっと音を立ててかじり、はにかむように笑った。
その笑顔を見て、シスター・エレナが小さくため息をつく。
「あなたは、本当に優しい子ね」
「……優しいんじゃなくて。交換しただけです」
ぶっきらぼうに答えたけれど、耳の奥が少し熱くなるのを誤魔化せなかった。
やがて食事が終わると、子どもたちは布切れの毛布にくるまり、次々と寝息を立て始めた。
眠れなかった僕は、窓辺に腰を下ろす。夜空には街の灯火と星々が揺らめいていた。
「……綺麗だな」
その小さな呟きは、誰にも届かない。
胸の奥で、燻るような炎が揺れていた。
(僕は、明日の分を少しでも増やしたい。ただそれだけだ……でも、このままじゃ、何も変わらない)
視線を落とすと、古びた上着の裾が目に入った。
布はすり切れ、色も褪せている。けれど、その縫い込みだけは今もはっきり残っている。
「トリス」
小さく、不器用な字で刺繍されていた。
「……僕の名前」
物心がついたとき、シスター・エレナが教えてくれた。
拾われたときに着ていたこの服の刺繍から、俺の名前は決まったのだと。
「じゃあ、これを縫った人は……僕の、家族なのかな」
誰が縫ったのかはわからない。
だが、それだけは唯一無二の「自分の証」だった。
僕は小さく、けれど力強く呟く。
「……僕はトリスだ。絶対に、ここから生き抜いてやる」
翌朝、僕は一人で冒険者ギルドへ向かうことを決めた。
まだ子どもでも、ステータスとスキルを鑑定するくらいは許される。
もし俺に力があるなら
それがどんなものでも、絶対に見極めてやる。
胸の奥で燻っていた炎が、ざわりと揺らめいた。
そのときはまだ知らなかった。
俺が“奪う者”としての宿命を背負っていることを。
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