孤児院の日常
王都の外れにある、石造りの古びた孤児院。
夕暮れの鐘が鳴ると、子どもたちは食堂に集まった。
長机に並んだのは、薄いスープと硬いパン。それでも子どもたちは一斉にかぶりつき、わずかな笑い声をこぼす。
その中で、トリスは自分のパンを半分に割り、隣の小さな女の子の皿にそっと置いた。
「……ほら、交換しよ。俺のはこっちで足りるから」
「え? でも……トリスのお腹が空いちゃう」
「平気、平気。ほら、こっちの方が美味しいんだって」
恐る恐る口にした女の子は、ぱりっと音を立ててかじり、はにかむように笑った。
その笑顔を見て、シスター・エレナが小さくため息をつく。
「あなたは、本当に優しい子ね」
「……優しいんじゃなくて。交換しただけです」
トリスはぶっきらぼうに答えたが、内心では耳の奥が少し熱かった。
やがて食事が終わると、子どもたちは布切れの毛布にくるまり、次々と寝息を立て始めた。
トリスは眠れずに、窓辺に腰を下ろす。夜空には街の灯火と星々が揺らめいている。
「……綺麗だな」
その小さな呟きは、誰にも届かない。
胸の奥で、燻るような炎が揺れていた。
(俺は、明日の分を少しでも増やしたい。ただそれだけだ……でも、このままじゃ、何も変わらない)
視線を落とすと、古びた上着の裾が目に入った。
布はすり切れ、色も褪せている。けれど、その縫い込みだけは今もはっきり残っている。
「トリス」。
小さく、不器用な字で刺繍されていた。
「……俺の名前」
物心がついたとき、シスター・エレナが教えてくれた。
拾われたときに着ていたこの服の刺繍から、彼の名前は決まったのだと。
「じゃあ、これを縫った人は……俺の、家族なのかな」
誰が縫ったのかはわからない。
だが、それだけは唯一無二の「自分の証」だった。
トリスは小さく、けれど力強く呟く。
「……俺はトリスだ。絶対に、ここから生き抜いてやる」
その声は夜空に溶けていき、星々がまるで答えるように瞬いた。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。