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第三部 エントの脱走(喜)劇

 それは、一瞬の出来事だった。エントは突然降って来た網に対応出来ず、ロープ伝いに上へ上へと引き上げられてしまった。しかも、技が使えなかった。

(上?一体何が……)

ロープに手間取りながらも体勢を変え上を向いたエントの目に飛び込んで来たものは、宙に浮いて動いていく楕円形の何かだった。

(どうやって飛んでんだ?)

当然、車が禁止で飛行船が大丈夫な訳がない。エントは誰かに連絡する事を考えたが、携帯はベンチに置き去りにされていた。

「うわ最悪!色々と!」

(ライトが面白がって開けられたらたまったもんじゃねーぞ……)

そうこうしている間に、エントはそれの中に入って行き、謎のサングラスやフードを被った者たちによって手足を縛られ、部屋に放り込まれた。ガチャリと重たい鍵をかける音が聞こえると、エントは芋虫のように這って動こうとした。しかし、ドアは頑丈で僅かに動く事も無かった。

(そうだ!床にロープを擦り付けて摩擦で……!)

馬鹿な考えであった。向こう側がそんな弱いロープを使って来る訳が無かった。エントは無駄に体力を消費しただけだった。

(力ずくで……も無理だし。どうすっかねぇ)

エントは鼻がムズムズして来た。

(あ……やべっ、こんなt)

盛大なくしゃみをし、エントはその勢いで後ろにでんぐり返しした。すると、手首の縄が外れた。

「っしゃ!」

しかし、誰かがやって来る足音がした。

(おいおいおいおいおい!)

エントは慌てて手も縛られている振りをした。足音は通り過ぎていった。エントは足のものも外し、慌てて部屋を出ようとしたが、どうにも出られそうな所は無かった。

(何だよ!)

と床を一度思い切り蹴る。すると、そのまま踏み抜き、エントは落下した。

(床は脆いんかーい!)

しかし、下は……制御室であった。そこにいるおよそ十人全員の視線がエントに集まる。

「ハ、ハロー……」

エントは全力で廊下を走った。もちろん全員が追いかけて来、けたたましく緊急事態を知らせる放送やブザーが鳴った。そのまま、エントは謎に屋上に付いていたデッキにやって来た。大雨が降っており、デッキの柵は異常に低かった。

(金無かったのか?)

とりあえず、エントはデッキの端まで走った。もちろん、デッキは行き止まりである。しかし、エントは迷う事なく走り続けた。追いかけて来る者はゆうに三十を超えていた。エントは本当の端まで来、多くのものが後ろに押されて前のめりになりながらも手を伸ばした。

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