第二部 身震い
『失礼。分かっていますよ』
「え?」
『あなたが私に聞きたい事です』
エントは身震いした。
『実はカルロウさんから既に報告が来ているんですよ。という訳で、エントさん、来て下さい』
エントは何処かへ瞬間移動させられた。
エントがいたのは、高く高く積み上がった本棚のある場所だった。
「はへ?」
「エントさん!こっちです!」
カルロウもいて、手招きして来た。エントがその通りに進むと、本を取り出しているギルドがいた。
「この辺りだと思います」
と取り出し、開くと、人の顔やら生年月日やら、ありとあらゆる個人情報が一人一ページで載っていた。
「これ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫も何も……戸籍ですよ?これ」
エントは目を丸くして辺りを見回した。
「じゃあ、ここは……」
「はい、ここは、狐の国宮殿の戸籍保管庫です」
「お、俺来て良いんですか?」
「ええ。勿論、他言しようとした時点で消される覚悟はして欲しいですが」
そう言ったギルドの目は本気で、エントは凍ってしまった。
「ほら、ありましたよ」
ギルドはあるページをエントに向けて見せた。
「スイン……」
エントはゆっくりと、冷や汗を流しながら見て行く。生年月日、出身地、属性、特殊能力、そして……
「住所……」
「生まれてからのものが全て載っている筈です」
フォニックス本拠地の住所から順に見ていった。この前行った海岸沿いの街の前は、
「孤児院……」
カルロウもエントとの距離も気にせず見入っていた。
「でも、これって……」
「もしかして……」
ギルドは静かに彼らの言葉の続きを述べた。
「スインさんはあくまで孤児であり、彼女たちは本当の姉妹では無い可能性が高いという事です」
重苦しい沈黙が流れた。
(出来れば、知りたく無かった……)
と俯くエントに対し、ギルドは依然として戸籍を眺めていた。
「エントさん」
エントは少しだけ顔を上げた。
「明らかにおかしい箇所があったんですよ。ここです。ここの住所―
エントはフォニックス本拠地に戻ると、庭に出て気持ちを落ち着かせ様としていた。
「エント君?」
しかし、誰かがやって来た。ソウマだった。
「大丈夫?」
「ああ」
しかし、ソウマを騙せる訳が無かった。だが、
「……頑張りなよ」
なんと、ソウマはそれだけ言って去って行った。
「……は?」
思わず、そんな言葉が出て来てしまった。
(ソウマが知ってる訳無いのに、なんでだ?)
エントは再び大きく身震いした。
(こんな事思いたく無いけど、みんなが怖くなって来た……)




