第二部 小さな出会い
「まてー!」
「わーい!」
少女はドローンを乗っ取って逃げていた。ツーハは更にスピードを上げ、距離を縮めて行く。しかし、急にドローンから離れてマンションの屋上に着地したため、ツーハはより高い向かいのビルに激突した。
「いったぁー!」
ツーハはそのまま落下して行く。
「お前馬鹿だな」
しかし、誰かが空中で受け止めたのだった。
「ばかとはなんだ!」
「俺はただ事実を述べただけだ」
少年はコウモリの翼で飛んでいた。ツーハは少年を睨みつける。
「そらはツーハのヒールドだ!」
「『フィールド』だ、馬鹿嬢」
「こら!お前が馬鹿だ!」
「馬鹿で結構。お前はとっとと行け。下の奴らが今にもお前を襲おうと待ち構えてる」
「……ありが、とう。ツーハっていう」
「知ってる。さっき言ってたからな。俺はシンだ。もう行け」
ツーハは素早く飛び去って行き、少女を捜した。
「どこだー!」
と大声で叫ぶと、
「こっこだよ!」
と返って来た。見ると、今にもスピーカーに取り憑こうとしている。
「まてー!」
少女はツーハがやって来る寸前にスピーカーに入って行った。すると、
『あーーーー!』
と酷い音量で叫んでみせる。ツーハを含む周囲の人々は思わず耳を塞いだ。少女は面白がり、再び叫ぼうとしているのか、息を大きく吸う声が聞こえた。
「こらこら。遊ぶのはええけど、みんな迷惑しとんでなぁ。ちょっと、これはやめとこや」
誰かがコンセントを抜き、少女は大人しく出て来た。
「ほら。みんなに謝りぃ」
「ごめんなさい……」
少女はしょぼくれた。ツーハはその者をじっと見た。
「おー、嬢ちゃん。テルちゃん追いかけとったん?丁度ええわ。こっち入り」
と手招きされて入ったのは、銭湯だった。二人の少女はその人に付いて歩く。
「ここで靴脱いでロッカーに入れんのや。んで鍵閉めて「あら、アロさん!また勝手に連れて来て!」
と女性が割って入って来た。
「何かあかんかった?」
「ちゃんと仕事してくれなくなるじゃあありませんか!」
「大丈夫大丈夫。テルちゃんの遊び相手見つけただけやから」
女性は溜息をつくと持ち場に戻った。
「ほな、行こか」
案内されたのは、空き部屋だった。
「こんなんしかあらへんけど、まぁ遊んだってくれや。テルちゃん独りぼっちやねん」
と玩具の入ったツーソール程度の箱を持って来ると、部屋を出ようとした。
「おいちゃん行っちゃうの?」
とツーハが尋ねた。
「おいちゃっ……。まぁ、ええや。客寄せパンダが来んねん」
と出て行った。




