プロローグ 思わぬ依頼
五月。皆は一旦日常を取り戻していた。ちなみに、ソウマは絶賛療養中である。本人曰く『だいぶ治って来た』との事だが、見かけは未だミイラである。
「ふぅ。依頼、どうだ?」
エントが尋ねると、アインは一枚の手紙を出して来た。
「今回の任務は……」
アインの溜めに、皆が注目した。
「子供のイタズラを止める事!」
ライトエント兄弟は椅子から落ちてズッコケ、他の女性陣も目を丸くしていた。
「えらいハードル低なったなぁ」
「い、いや、きっとこれはトルキのせいだ」
「普通に驚きますよ?」
色々思う事はあったものの、依頼を蔑ろにする訳にはいかないので、一度行ってみる事にした。
一見普通の農村で、闇屋敷が見えていた。エントは首を傾げた。
「別に変わった所は無さそうだけどな……」
「うーん、バトルできない?」
「どうだろうな……って、ツーハ!?」
「ついてきた!」
皆はどう言おうか困ってしまった。そんな中、歩き出した。
「まぁ、ええんちゃう?それに、同年代の子がおった方が説得しやすいかもしれやんし」
結局、ツーハは付いて来る事となった。少し村を歩いて行くと、荒れた畑があった。
「こりゃ酷いな」
とライトが零すと、畑の前に立っていた女性がやって来た。
「あら、あなたたちが戦士さんでしょうか?見て下さいよ、これ!いくらなんでも酷すぎると思いませんか?一体、どんな教育をしていればこんな事をする様になるのか……」
とブツブツ文句を言い始めた所で、何やら悲鳴が聞こえた。慌てて行ってみると、トラクターが大暴走していた。
「こ、これを止めろと?」
「トラクターなどの産業用車両は特例として許可されていますが……。これは、酷いですね……」
警察官である筈のカルロウが動かなかった。
「カルちゃん、捕まえんでええの?」
「いや、未成年の場合親に責任が行くのですが、いなかったらどうしようも無いなと」
カルロウは駆け出した兄弟三人を見ていた。
「あと、ちょっと、似てるんですよね」
「?」
「私も、大概でしたから」
それだけ言うと、カルロウはトラクターのタイヤに向かって青の方を飛ばした。すると、丁度進行方向に落ち、タイヤが空回りした。
「すげー!」
とエントが感激していたその瞬間、誰かがトラクターのボンネットから出て来た。
「わーい!」
「子供だな」
「そうだな」
「おーい!」
と三兄弟が言っている間に、
「つかまえてごーらん!」
と何処かに消えてしまった。
「「あっ」」
「おいかける!」
ツーハは勢いよく飛び始めた。




