第五部 ずっと
翌朝、五人はいかにしてトルキに見つからずに任務をこなして行くか話し合っていた。が、良い意見は出ず、トルキを野放しにしておいて良いのか、という話題に切り替わりつつあった。因みに、カルロウは先週から署に呼ばれていないのだ。
「とりあえず、まとめるぞ」
フウワは立ち上がり、ホワイトボードに書いていく。
・妖気を知られている→
・時間が経てば経つほど見つかる可能性が高い→最大
でも一年でケリをつけたい
・被害が拡大していく恐れ→
・活動して噂が流れると見つかるかもしれない→人数
は最小限にし、こっそりと倒しておく
「うーん……。なんというか、イマイチパッとしねーな」
「どうしても一個目と三個目は解決しようがあらへんしなぁ」
悶々とした雰囲気のまま、皆は黙りこくってしまった。しかし、その沈黙を打ち破る、ドアが開けられる音がした。誰かが遠慮無くこちらへ来る足音がした。皆は戦闘体勢を整えたが、スインは目を大きく開いただけだった。
「会いに来たよー!スインちゃーん!」
「なんや、エムル君か」
「『なんや』って、酷いなー。意外にツンデレタイプ」
「この人何?姉さん」
「一応恩人」
「一応?ま、良いけどさ。今日はお困りの皆さんに良いものを渡しに来たんだ」
エムルは何かを鞄から取り出した。
「これ付けてたら、妖気消えるんだ!じゃあ、僕はこれで!」
六個のお守りが置かれていたのだった。スインは首を傾げた。
ショボウ町から遠く離れた町。一見普通の町だが、一歩裏路地に足を踏み入れると、その異常さが分かる。住まいの無い者たちで溢れかえっているのだ。彼らはそのまま野ざらしで寝る生活を送っている。大抵の者は現実を忘れようとして酒に溺れる、間違ってこの闇の世界に足を踏み入れた者を襲って金目の物を奪う、のいずれかに当てはまる。今も、誰かの悲鳴が響いている。
「はぁ。馬鹿じゃねぇの、あいつら。あんなやつれた奴なんて絶対ちょっとしか金持って無いだろうに」
しかし、その両者に当てはまら無い少年がいた。帽子を深く被っていて目元は分からないが、尻尾の色は黒であった。少年はフラフラと道を歩き、烏が集っており異臭のするゴミ袋の横を通り過ぎ、表通りに出た。
「あー、やっぱ暗いとこは気が変になりそうだ。俺はそういうとこが有利なんだがな」
真っ直ぐに銭湯に行き、着替えをし、コンタクトをはめた。
「おー、シン。今日も客寄せパンダ頼むでー」
「なんだその言い方」
シンは渋々帽子を外し、受付の仕事をし始めた。




