第四部 思わぬ提案
スインが手を挙げた。
「私が行ってくるわ。みんなはここで待っとって」
そして、急に姿を消した。
「スインが消えた!?」
驚いているエントにアインが話しかける。
「姉さんの特殊能力は“透明化”なの。こういう場面もそうだけど、狙撃の時に自分の位置を隠せるって言うのは大きなアドバンテージになるみたい」
エントは驚きつつも頷いた。一同はスインが戻って来るのを待つ。しかし、後ろに何者かの気配を感じた。振り返る間も無く、エントは蹴り飛ばされてしまった。
「こっちにも俺はいるぞ、戦士さんよ」
「でたな、やさいどろぼう!つーはがせばいする!」
「ちびっ子にやられてたまるかよ。あと、せばいじゃなくて成敗な」
ツーハは顔を真っ赤にした。しかし、今度は全く反対側からライトが蹴り飛ばされた。
「驚いたか?」
目の前に同一人物が二人。皆が困惑する中、ソウマだけは何故か落ち着き払っていた。ソウマは目を閉じた。そして、巨大なハエトリソウを地面から出すとその口の様な葉を茎が育って異常に長くなることによって木の葉がある所に突っ込む。ハエトリソウが縮んで出て来ると、見事に先程の人物が食べられようとしていた。先程いた筈の二人は消えていた。
「分身を使ったんだね。特殊能力かな?でも、僕が君と話したいのはそこじゃない」
ソウマは野菜泥棒を目の前まで持って来る。
「君がしていたのは泥棒じゃない、『間引き』だ。それに、この森もしっかりそれがされている。君が手入れしてるんでしょ。どうしてわざわざこんなことを?」
目の前の人物はソウマに似ていた。見た目はもっと大人っぽく、目の色も黒だが。
「……俺は親もいないし身寄りもなかった。だから、何か食べ物が欲しかったんだ。だけど、人の畑から野菜を盗るのは流石に気が引けた。だから、間引きする代わりに抜いた奴をもらってたんだ。そうやって町を転々としていたんだが、ここの奴らは全く分かってねぇ。間引きも知らず、ただ俺が盗って行っただけだと思ってやがる。一応町長には確認したのに」
ソウマは目の前の男をじっと見た。
「君、名前は?」
「コウだ。俺を警察に突き出すんだろ?好きにしなよ、俺の味方はここにいない」
「いや、気が変わった。コウ、先頭集団フォニックス本拠地で家事をしてくれないか?もちろん、住んでいいから」
全員が思わぬ提案に目を丸くした。今出て来たスインに至っては何が行われているのか全く理解できていない様だった。コウは迷いなく頷いた。
キャラクター命名秘話⑧ ツーハ
ツーハは自分でも分かり辛いだろうと思っています。分かった人は普通にすごいです。
「ツ」+「ー」+「ハ」=「光」
上から組み合わせて見てください。
次回は少し変わります。