プロローグ 明日は無い
再びやって来た四月。皆は仲良く朝食を摂っていた。
「もう一年なんやなぁ。えろう早いわぁ」
「本当だな」
などと感慨に耽りながら。
「……あれ?誰か走って来ていませんか?」
イネイがいち早く異変に気づいた。すぐさま玄関のドアが外れる程勢いよく開けられ、アルガがやって来た。肩で息をしながら、必死の形相で話し始めた。
「急に、俺らの家に、押し入って、来て」
アルガは息を整えた。
「言って来たんだ。『フォニックスの本拠地の場所を教えろ。さもなくば、お前らの
―明日は無い
ライトとエントは目を見開いた。身の毛がよだつ感覚に襲われた。
って」
アルガが言い終わるや否や、ライトが詰め寄って来た。
「今どうなってる!」
「義姉さん達が戦ってるけど、無事かどうかは……」
ライトは高速で準備し始めた。
「よく聞け、あいつは勝てる気が全くしない程の強敵だ。だから」
ライトは今までに無い程冷たい瞳をしていた。
「覚悟はいいな?」
もちろん誰も退かなかった。フォニックスたちは、アルガの後に付いて行った。
レイナが倒れており、チーナだけが戦っているという状況だった。
「良かった、息はある」
アルガは安堵したが、一同は相手を見てかつてない程の緊張感を味わっていた。
「……俺が助言できる事は、あいつの特殊能力の事だけだ。技封じって言って、一度使った技はその戦いの間使えなくなる」
ライトは震えた声で、しかし淡々と説明した。
「そして……親父の仇だ」
ライトの妖気がぐんと高まったのをその場にいる全員が感じ取った。エントも同様である。相手は一同に気が付いた様だった。
「その妖気は、あいつの息子か。自ら殺されに来るとは愚かな事をしたものだな。まぁいい、愚か者に、明日は無い」
「愚か者上等。お前だけはやっぱり許せねぇんだよ!トルキ!」
ライトは走って距離を詰めようとした。トルキはあくまで冷静に、岩の壁でライトを阻んだ。更に、周りにも岩が立ち、倒れようとする。
「ライト!」
しかし、ライトはスレスレで走り抜けた。
(危ねぇ。勢いで勝てる様な相手じゃない。知ってた筈なのに……落ち着け、俺)
トルキは全員の頭上に岩を発生させ、落として来た。アインの反応が遅れたが、エントが持ち前の跳躍力を利用して助けた。スインは持ち前の水の弾丸を撃ち込もうとして、取りやめた。
(今撃ったら後があらへん……)
トルキは岩を飛ばして来た。皆は上手く避けて行く。しかし、急にライトめがけて岩が降って来た。
「ライト君!」




