第五部 これも秘密(?)
フウワが走って行き、ソウマもリビングへ向かった後。四人が姿を現した。
「いやー、ええなぁ。青春やなぁ」
「良いんですか?こんな事して……」
「イネイさん。これもいい経験だよ」
「そうですよ!イネイさんはどうなんですか?」
「……カルロウさん。そ、そういうのは……ちょっと、えっと……」
「ははーん」
「ええ事や」
「ち、違うんです!た、ただ、なんというか、ちょっと……」
「ちょっと?」
「え、えぇ」
イネイはやかんの様に蒸気が吹き出し、固まってしまった。
「あからさま過ぎますねぇ」
「ちょっと質問攻めし過ぎたんちゃう?」
「そーかなぁ」
イネイは我に帰り、慌てて顔を洗いに行った。
「とりあえず、フウワちゃんにおめでとさんって言って来よか」
「見てた事バレるでしょ」
「そっか」
「自分から言ってくれるのを待ちましょう」
イネイは鏡越しに自分を見た。
(自分は、平凡過ぎて、釣り合いませんね。それに、穀物屋敷に生まれたからには、お見合いも、しなきゃですし……。自由なんて、ありませんよね)
「イネイ?何してんだ?」
「はひっ!?」
ここは、男子トイレだった。しかも、その声の主は、ライトであった。
「すすすすすみませぇぇん!」
「あ、ああ。良かったな、誰もいなくて」
イネイは急いで出ようとするが、ライトが顔を覗き込んで来た。
(えええええぇぇぇ!?)
「イネイ」
ライトはすっと綿埃を取った。
「ゴミ、ついてたぞ」
(な、なんだ……)
「あ、ありがとう、ございまふ」
(噛んだー!)
「ああ。ごめんな、びっくりさせて。ゴミが付いてたら、台無しだろ?」
イネイは勢い良く走り去った。
「俺、マズいことしたか?……あっ、これってセクハラか?やっべ!やらかした!」
こっちの二人はまだまだズレズレであった。
(でも、せっかくの綺麗な髪が、台無しになるの嫌だったんだよなぁ……)
「え、ええと、これからよろしくお願いします?」
「どういたしまして?」
「付き合ったってなっても、何するのか分からん……」
「うん……。パキラさんに聞いてみる?」
「もう聞いたんだが、『ギューってする!』としか……」
「何それ……」
こちらの二人もどうすればいいのか分からなかった。
『キスも出来んのかヘタレ』
『お前から何かしろよ』
とソウマの中でレッドがうるさかったが。
「キスはハードル高すぎだよ!」
ソウマは思わずそう言ってしまった。
「キス!?」
フウワは真っ赤になった。
「あ、ごめん。レッドがうるさくて……」
賑やかな午後であった。




