第三部 今山の
「……開けて、みる?」
『……ああ』
ソウマは丁寧に取り出し、開けようとしたが、開かなかった。
『開かないな。結界みたいなものか?余程見られたくないみたいだな。諦め「いや、仮に誰かがかけた技ならまだ……解除出来ると思う」
ソウマは外に出た。
『おい!こんな夜更けにどこ行く気だ!』
「外界と切り離された、不思議な場所」
ソウマはレッドが何を言っても気にも留めず、普通に道を歩いて行く。午前一時の街は、恐ろしく静まり返っていた。
『ここは……』
「そして、僕の前の家」
今山に辿り着いていた。
『あの氷猫に怒鳴られても知らないぞ?』
「大丈夫だよ。登る訳じゃないから」
ソウマは登山道をあえて外れた。
『真っ暗なのに危ないだろ!遭難したらどうするんだ!』
「大丈夫だよ。ちゃんと、あるから」
坂を注意深く降り、最も低いであろう場所まで来ると、そこには不思議な巨岩があった。
「こっちは西の巨岩。かかってる技を外す事が出来る」
『いいのか?こんな事に使って』
「逆にこっちの岩はこれくらいしか使い道ないよ」
ソウマは本を岩にかざす。すると、本が纏っていたオーラが消え失せた。
「よし、これで読める」
レッドは何も言わなくなった。ソウマはどんどん読み進めて行き、三十分後には本を閉じた。案外薄い本だった。
「成程、この結界の意味がよく分かったよ」
『張り直せるのか?』
「大丈夫。効果は今山に居る時だけだから」
ソウマは颯爽と帰っていく。
「結ばれちゃいけないって分かってても、どうしても一緒にいたいって思っちゃう気持ちは、今の僕なら痛い程分かるよ」
『馬鹿』
「え?」
『とりあえず、お前は馬鹿だ』
翌朝、と言ってもほぼ寝ていないが、ソウマはイヤホンをし電話をかけた。電話はすぐに繋がった。
『もしもし。どうされましたか?』
「ギルド様。この国の秘密を、知ってしまったのかもしれません」
数秒の沈黙の後、ギルドは返事をした。
『あれ、まだ残っていたんですね。良いでしょう、あの中から見つけ出したというのは、何かの縁かもしれません。全て話します。話しますから、決して、口外はしないで下さい。絶対に』
電話を切った後。
「僕も、言った方が、良いのかな?」
『ん?』
「僕がまだ前の名前だった時の事とか、なんで今山にいるのかとか」
ソウマはカーテンを開ける。部屋が一気に明るくなる。
「せめて……フウワさんにだけでも。手紙の方が良いかもだけど。気まずいから。とにかく伝えておきたい……僕の、秘密を」
みんなのくせ⑦
猫の国の住人は猫とは言えど、普通に人と同じように寝ている。
しかし、ヒノガは何故か丸まって寝たがる。この秘密を知っているのは、パキラだけである。




