プロローグ 考える者
エントは前でも横でも無く、後ろに飛んだ。
(こいつ……。瞬時に日本刀の峰の方向へ跳びやがった……)
お頭は即座に方向転換をしたが、視界を何かが横切り、エントは消えた。
「ツーハ、がんばりまくり!」
ツーハが一瞬だけ持ち上げて移動させたのだ。
「サンキュー、ツーハ。寿司でもなんでも奢る」
ツーハは目を輝かせた。エントはもう一度跳び上がった。
(狙撃力は無いし、近接攻撃も避けられるんだったら、答えは一つじゃねえか!)
「ツーハ!思いっ切り上に飛んどけ!」
エントは拳に炎を纏った。
(攻撃範囲で、押し切るのみ!)
そのまま落下した勢いで、地面に亀裂が入って行き、急速に熱くなって行った。
「どうだ!」
流石に熱さには耐えられなかった様だ。お頭は倒れた。
(今のうちに!)
エントはお頭を縄で縛り、さらに妖気封じという妖石を利用した器具も付けた。
「エン兄それなぁに?」
「ああ、まぁ、妖気封じっていう、技使えなくするやつ。ギルド様に貰ったんだ。そーいや、あいつら捕まえたか?」
「うん!キラキラなお姉さんが!」
「ん?それって……」
森の中からカルロウが現れた。
「エントさん!勝手に出て行かないで下さいよ!」
「す、すまん」
「全く!妹さんまで巻き込んで!この人連れて行くので、帰っておいて下さい!」
「はい……」
カルロウはお頭を引き摺りながら去って行った。
「エン兄」
ツーハは小声でそう言い、何かを渡して来た。
「妖石……?」
「お母さんのって。あと、すしはざくろずしね」
「分かった」
(高い方行きやがった……)
そうして、帰って行った二人であった。
日も落ちかけた頃。何者かがエントがお頭と戦った場所へとやって来た。
「随分と派手に暴れた様だな。あの頃は五歳であったか。こちらは母親に似た様だな」
その者は焼き尽くされた森を眺め、その後そこに踏み入れて行った。すると、逃げ遅れた者が火傷状態で倒れていた。
「つくづく、正義とは、なんだろうな」
その者は彼らを回復技で少し直し、全員おぶった。すると、その者はたちまち消え去ってしまった。
正義とは何だろうか。正義という名の下にあれば、何をしても良いのだろうか。第一、この人殺しですら許容されてしまう狂気的な世界で、この問いを投げかけるのは無意味かもしれない。だが、それを延々と考え続ける者がいる事は確かであり、そして、画面を挟んで向こう側の世界でも、考えてしまう様なものなのではないか。
『そう思うんだよ、ボクはね』
みんなのくせ⑤
フウワは以前レジ打ちのバイトをしていたので、荷物のパッキングが異様に上手い。




