第二部 関門との戦い
森はなんと全ての地面が底なし沼であり、木の枝を利用して進むしか無かった。
(うーむ、赤い方のソウマみたいな運動神経があればなぁ。こうやってジャンプしたら木の枝乗れ……)
本当にそれが出来たのだった。
(え?え?)
エントはそのまま前の枝に飛び移り、どんどん前へ進む事が出来た。そして、無事に森を抜けた。
「俺……なんか今日神ががってる?」
エントは自分に驚いていた。次は橋も渡し船も無い大河を渡らなければいけなかったのだが、エントの勢いは止まらなかった。
(この前のギーヨ様凄かったよなあ。ジャンプが特に。滞空時間一分はあったぞ?)
エントは思いっきり前に飛んだ。すると、なんと向こう岸に着く事が出来たのだった。
「ふおおおおお!」
エントは大興奮であった。しかし、現実はそう甘くなかった。なぜなら、次の関門は迷路の様な洞窟であったからだ。エントは勇ましく入って行ったが、出口だけで無く帰り道まで分からなくなってしまった。
「かれこれ三時間だな……」
エントは段々ヤケクソになって来、思わず火の玉を飛ばしてしまった。
「はっ……俺は何やってんだよ!いや、待てよ。これ、出口分かるんじゃね?」
エントは妖気から火の玉が壁にぶつかりながら外へ出て行く動きを感じ取った。
「よし、行くか!」
しかし、辿り着いたのは入り口だった。
「ま、まぁ、これで絞られたしな?」
もう一度同じ事をし、ようやく出口を発見した。一歩洞窟を出ると、樹齢が計り知れない程の大樹が目に入った。
「すげー!」
エントはぴょんぴょん跳ねた。無自覚の内に。
「でも、こっからどーすんだ?」
その時、普通の人なら失神、エントでも全身に鳥肌が立つ程の妖気を感じた。そして、大木の幹ほどある大きな獅子がゆっくりと現れた。
『ほう。ここまでやって来た者の割には弱そうだがな。だが、その跳躍力は狐とはいえ素晴らしいな。一つ、試させて貰おう』
獅子は片前足でそれの顔ほどある火の玉を十つ出してみせた。勿論、それを一斉にエントに落とす。エントは必死に避けようとするが、やはり無理であった。
『青年よ。まだ時間はある。出直して来……』
獅子が思わず言葉を失ったのは、なんと咄嗟の判断力で上に跳んでいたからである。
(高いのはやっぱ怖えーけど、そんな事言ってる場合じゃねぇよな!)
エントは既に火の消えた地面に着地した。
「どんなもんだい!」
これには流石の獅子も驚いたようで、声を出して笑い始めた。
『面白い奴だ』
みんなのくせ②
なんだかガキの雰囲気が抜けないエントだが、コーヒーはブラック派。本人曰く、「ホットの甘いのは吐きそうになる」らしい。




