第三部 おせちとの出会い
午後になると、ソウマは今山へ出かけた。オスコは草食動物の餌を追加している所で、不機嫌そうに出迎えられた。
「前来てからまだ一カ月も経って無いだろ」
「今日は元旦だからおせち届けに来たんだけど……」
「オセチ……ああ、あれか。店で予約受付中って貼ってあったな」
「これはコウが作ったやつだけどね。色々入ってるけど、口に合わなかったら言ってね」
「まぁ試してみるか。現に、ほうじ茶は美味かった」
ロルがどこからともなくやって来た。
「こいつ昨日脱走したんだ。どうせお前の所だろ?」
「あ……うん」
ロルはしてやったりという顔をしていた。
「ん?ま、いつもの事だけどな。そろそろ諦めてる」
オスコは風呂敷を開け、お重を不思議がりながら一段一段分けた。
「肉は無いんだな」
「和食だからね。欲しかった?」
「いや、いい。この黄色いのプチプチしてるぞ」
「それ醤油かけなくていいの?」
「ショウユ?」
ソウマはオスコに色々説明したのだった。
「えーっと、これはタツクリ?でこれは……」
同じ様な事をしている者がもう一人いた。
「ギーヨ様……早く食べないと会議に遅れますよ」
「見て下さい!キョウ!この茶色い醤油という液体は豆から出来ているそうですよ!」
「はい、食べて下さい」
「食べますか?」
「もう昼食は摂りましたし、なんですかその白い半円は」
「カマボコだそうです」
キョウはため息をついた。
「……分かりました」
若干警戒しながらフォークで口に運んだ。
「どうですか?」
「……」
キョウは言葉を失った。
(おい…しい……!)
ギーヨは不思議そうに見つめながら食べていた。
「あっという間に無くなってしまいました」
「……そうですね」
二人は我に帰った。会議開始五分前である。
「これ洗っといて下さい!」
「行きますよ、ギーヨ様!」
二人は通路を失踪した。従者驚きの光景である。なんとかギリギリで会議室に滑り込んだのであった。
((料理の味がしねぇ……))
一方、あの兄弟は新年会の真っ只中だった。
((足いてぇ……これ絶対後で痺れるな……))
しかし、お偉方に囲まれれている以上正座を崩すわけにも行かなかった。ツーハはいつも通りむしゃむしゃ食べているが。
「シャラトぉ、いつ終わるんだ?」
エントが小声で言う。シャラトは答えてくれなかった。二人は慣れない格好に苦しめられ続ける羽目になった。
「……皆が酔い潰れたら帰っても怒られないよ」
シャラトは静かに言う。二人は希望を取り戻し、今一度姿勢を正した。




