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第四部 フウワという名

 フウワは歩きながら、遠い記憶に思いを馳せていた。


 顔は靄がかかっているかの様に思い出せないが、声は今でもはっきりしている。『また会えたらいいね』なんて言っておきながら、行ってしまってから一度も会えていない父。弟もそうだが、父の方が当然ながら一緒にいた時間は長かったのだ。

『お父さん、なんで『フウワ』って名前にしたの?』

幼いフウワは、そんな質問を父にした事があった。

『サクラとか、ハルカとか、色々あったんだけど……ふうわりと、優しい子になって欲しいってのが、一番の願いだったから』

『分かった!絶対なるから……フウワの事、忘れないでね?』

幼いながらも、フウワはもうすぐ父と別れる事になると理解していた。なぜなら彼は……人間だからである。


 「……フウワさん?」

ソウマが心配そうにフウワの顔を覗き込んだ。

「え?あ、ああ」

フウワは動揺丸出しの返事をした。

「どうかしたの?」

「いや、ちょっと思い出してただけだ」

フウワは微笑んで誤魔化した。ソウマはイマイチ納得出来ていなさそうではあったが、前を向いた。

「疲れてたらロル君に乗っても良いよ?」

「いい。良いんだ……」

フウワはソウマにバレない様少しだけ泣いていた。

(私って自分で思ってるより弱くて泣き虫なのかもしれないな)

「そろそろだけど、大丈」

フウワはうっかりソウマに抱きついてしまった。ソウマは一切の冷静さを失い慌てふためいた。フウワはいよいよ本格的に泣き始める。ロルは冷静にソウマの腕を鼻で押す。ソウマはそれに従い自分より大きいのでよろけそうになりながらも自ら腕を回して話しかける。

「やっぱり、今日は変だなって思ってた」

フウワは泣いたままである。

「僕はフウワさんの事、これっぽっちも分かってあげれないからさ……下手に何か言えないけど、これだけは。僕はフウワさんがどんな血筋で、どんな事をしたってその信念を変えないでいてくれれば、フウワさんだと思うよ」

「なんだ…それ」

フウワは顔をあげた。

「私はずっと、フウワだよ」

フウワはそう言った後、立ち上がった。

「お前だから言う。他の奴らには言うなよ。正直言って……まだちょっと怖い。私は人間と妖怪のハーフ……俗に言う半妖だ」

フウワは顔を強張らせてソウマを見た。

「ありがとう」

ソウマの意外な返答にフウワは戸惑った。しかし、ここにずっといる訳にはいかないと思ったのか、

「どういたしまして。そろそろ行くか」

とソウマから離れ、歩き始めた。ソウマとロルも後に続いた。


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