第三部 忠狼の戦い
フウワはテールハンドを出しかけて引っ込めた。
「ロル……君?え?なんで?」
ソウマは歩み寄って来たロルを見て驚く。
「ガルルル」
「……分かった。じゃあ、ロル君には森に潜んでる方をお願いするね。ロル君の方が森では有利だし、相手もまさか僕らと協力してるなんて思わないだろうし」
フウワは頷いた。
「これで心置きなく移動出来るな。だが、一匹で大丈夫なのか?」
「ロル君は、単独でいた方が強いから。でも、食べたり殺したりするのは駄目だよ?」
「ヴォウ」
ロルは再びしなやかに走り出した。狼の嗅覚は人間の百倍あると言われる程である。ロルはすぐさま火薬という嗅いだ事の無い匂いから二人を見つけ出した。しかし、二人は離れていた為、反撃される恐れがあった。狼は賢い生き物だ。それくらいの事は重々承知していた。茂みに隠れて二人が合流するのを待つ。ジリジリと、距離が縮まって行く。そして、互いを認識し合い話し始めた刹那、ロルは飛びかかった。二人は発砲するが、ロルはジグザグに走って避ける。そうしている内に、弾切れの様だ、二人は銃を投げ捨てた。そして、強力な木による叩きつけ攻撃を仕掛けて来、それを避けるや否や金属の塊が降って来た。身体能力トップクラスのロルでも、流石に疲れを見せ始めた。常人であればすでに車に轢かれたカエルの様になっている事だろう。だが、相手も疲れない訳が無かった。段々と数が減って行く。しかし、遂に右前足に直撃してしまった。
「よし、なんとか……」
ロルは三本の足で器用に走って見せる。とうとう木の方に飛び掛かった。そのまま首筋に噛みつこうとしたが、ソウマの言葉を思い出し、横腹にしておいた。十分致命傷な気がするが。塊も避け、再び飛び掛かろうとしたが、よろけてしまった。相手は容赦なく攻撃した。しかし、その攻撃がロルに届く事は無かった。グラスヒールによって殆ど回復し避けることが出来たのである。それだけでは無い。ロルの姿が変わり始めた。足はより筋肉質になり、爪や牙が発達した。そして、僅かだが妖気を感じられる様になった。
「ウォーーウ」
という遠吠えも、辺りの空気がビリビリと震えた。そこからは、一瞬で相手が倒れていた。やはりソウマがやって来た。
「ロル君、妖獣になったの?」
「グヴォウ」
「なんか、ゴツくなったな」
二人も倒し終え、ソウマは丁度ロルを見つける事が出来たのだ。
「ありがとう。ようやく、決着がつけれそうだね」
「そうだな」




