第二部 五分の一
ソウマはなるべく音を立てない様気をつけながらフウワの元へと戻って行った。フウワは縮こまって動かないでいた。
「ちゃんと待ってたな。合計十人で、小型のものを二つ両手に持って俺らを探し回ってるのが二人、長めのおそらく遠距離射撃をする為に小高い場所にいるのが二人。で、大砲の準備を少し遠くからしてたのが二人、一人の司令塔を守る為に三人が武器を持ってる。先に銃火器持ってる奴らから倒すのが良いだろうな」
ソウマはひと通り言い終えると、いつもの方に戻った。
「先に遠距離射撃の二人を倒した方がベストだと思うけど、フウワさんはそれで良い?」
「……なんでも、良い」
フウワは俯いたまま答えた。
「……なんなら、僕一人で行って来ようか?」
「それは許可出来ない。許可出来ないが……行ける気がしない」
フウワがようやく顔をあげると、ソウマは察した。フウワは泣いていたのだ。
「少し、嫌な事を思い出した。大丈夫だ。少しすれば止まる」
フウワは揺れる声でも尚そんな事を言う。ソウマはフウワの頭を撫でた。フウワは何も言わなかった。
「弱気な時だって、あって良いと思うよ、少なくとも僕は」
フウワは涙を拭った。
「すまん。もう大丈夫だ。行くぞ」
二人は音を立てない事と、木陰から出ない事に十分気を付け、小高い所、丘を上り始めた。
「妖気でバレないのか?」
「大丈夫。妖気が分かったら既に撃って来てるよ」
「罠かもしれないぞ?」
「フウワさんは、守ってみせるよ」
「『は』じゃねえだろ。『も』にしろ」
ソウマは頷いた。二人はハエトリソウとテールハンドで動きを封じ、素早く銃を奪った。
「こいつらどうする?」
「警察呼ぶ?」
ソウマは携帯を出す。
「んー、そうだな」
ソウマは電話をし始めた。すると、直ぐに警察官が瞬間移動で来た。そして、二人を連行して行った。
「これで五分の一か……」
二人は、洞穴に隠れながら話す。
「そろそろ大砲の準備出来ちゃったかな?」
「二手に分かれた方が良いか?」
「いや、森に潜んでる方からにしよう」
「なんでだ?」
「おそらく、さっきの二人が一番弱い。近距離で勝てない人に援護射撃を頼んでるんだと思うよ」
「……信じるからな?」
ソウマが返事をしようとした丁度その時、洞穴に勢いよく何かが跳び込んで来た。その灰色の物体はしなやかに二人の上を天井すれすれで跳び越え、奥でストンと音もなく着地した。その瞬間、その物体の輪郭がはっきりし、何だったのか認識出来る様になった。




