プロローグ フウワの憂鬱
今年も終わりかと思わされる、十二月。朝食を食べ終えた時、フウワは用事があると言って何処かに行ってしまった。フウワが一人で外出する事は珍しく無い上に、今入っている任務はさほど苦労する様なものでは無さそうだったので、皆は特になんとも思わず送り出した。フウワは今山に行くのとは逆の方向に歩き始める。
「……はぁ。なんで今更なんだよ」
フウワはあの茶色い侵入者Gを見つけた時以上に嫌そうな顔をしていた。
「フウワさん」
ソウマが後ろからやって来た。フウワは慌てて顔をいつも通りにした。
「ど、どうしたんだ?」
「ちょっと心配で。今朝からずっと雰囲気が重かったから」
(バレてたのか……)
フウワは来なくて良いと言えず、後から付いて来るソウマを気にしながら歩き始めた。
「それにね」
ソウマがポツリと、小さな声で零す。
「僕はいなくなる人の雰囲気を、良く知ってるんだ」
フウワはちゃんと聞こえていた。聞こえていたが、返事をしてはいけないという感じがし、そもそもどう返すか浮かぶ筈が無かった。ソウマからしてみれば独り言だったのかもしれない。しかし、その目は何処か遠くを見ているような気がした。しばらく沈黙が続く。しかし、その沈黙はソウマが道を外れて雑草を見始めた事によって破られた。
「ちょっ、遅れたくねぇから先行っちまうぞ?」
「あっ、ごめん」
ソウマは慌てて付いて来た。そうこうしている内に、目的地近くの森にやって来た。ソウマは急にフウワの手をとり、茂みに突っ込む。バァンという聞き慣れない音と、火薬の匂い……本物の銃だった。弾丸は先程二人がいた所に飛んだ訳では無かったが、二人は十分困惑した。
「あいつら、何者だ?」
「お前はここにいろ。俺は少し相手の人数や銃の種類を把握してくる」
急に赤い目になって話しかけられたので、すっかり困惑したフウワだったが、ひとまず指示に従う事にした。
ソウマは軽い身のこなしで木から木へと飛び移り、先程撃って来た者を発見した。
(二つ同時に小さいの持ってやがる)
ソウマは更に移動し、どんどん発見して行く。遂には司令塔となっていそうな者まで発見した。しかし、森の先の光景に一瞬動きを止めた。
「これが、“出入り口”なのか……」
厳密には、この世界と人間界の出入り口である。ここを通るのを許されているのは、資格を持った外交官だけである。
「銃はこっからか。殺したら極刑なのにな」
個人の力を強め過ぎる事の無い様、自動車などの移動用機械や銃などの武器の持ち込みは禁止されており、それらを使用し人殺しを行うと極刑なのだ。
キャラクター設定㉓ オムギ
オムギは古い風習に囚われる事のなく、潔い性格です。
しかし、我の強い所があり、それゆえに敵を作ってしまいがちな人かもしれません。




