第五部 急な予定
翌朝。まだ静かなリビングで、固定電話がけたたましく鳴っていた。コウは慌てて受話器を手に取る。
「もしもし、誰だ?……え?十時くらいで良いか?ああ、分かった。じゃあ、俺は朝飯の準備するから」
コウは受話器を置くと、溜息を吐いた。
「……なんてこった」
コウは
「起きろー!」
と叫びながら朝ご飯を最高速度で作り、ゆっくり起きて来た皆を叱りながら食べさせ、準備をさせた。
「なんでそんなに慌ててるんだ?」
「実は、穀物屋敷に呼ばれたんだよ、お前ら六人が」
六人は顔を真っ青にして慌て始めた。
「「行って来まーす!」」
皆は勢いよく家を飛び出し走り出した。
「急な呼び出し、失礼しました。……普段着で来たんですか?」
イネイに出迎えられたのだが、不思議そうな顔をされてしまった。皆はキョトンとする。
「今日は結婚式って、言いませんでしたっけ?」
ちなみに、コウが忘れていただけである。皆はまた驚く。
「借りられるので、大丈夫ですよ」
そして、皆は和服の方の正装を着付けられ、それぞれが変わり様に笑ったのであった。
「あー、疲れたー」
エントは普段着に戻って伸びをした。
「まさか、ナノガさんとは……」
実は、この結婚式、穀物屋敷の“神”と呼ばれるその一族を守る為にいる兵たちのトップ、オムギの者だったのだ。そこまでは良い。だが、その相手がなんとナノガだったのだ。
「皆さん!今日は来て頂き本当にありがとうございました!出来る限りのお礼をさせて頂きます!」
イネイは色々な袋を持って来た。
「我々が丹精込めて作った穀類です!」
皆は圧巻され、何も言えなかった。
「ばーか」
誰かが笑いながらイネイの頭を軽く叩く。
「地味に痛いからやめて下さい、オムギさん」
「え?」
というライトの声は二人に届かず、
「挨拶回りは良いんですか?」
「私がそんな面倒な事をすると思ったか?まぁ、ナノガは行ったが」
「お二人で回らないと意味ないのでは?」
と話が進んで行ってしまった。
「贈り物のセンス無さ過ぎだろ!」
「じゃあ、一体何を……」
「……んーじゃあ、お前が行け」
「はい!?」
「お前もそろそろ年頃だし、社会勉強になるだろ?」
「でも、ここでのお仕事ありますし、むしろご迷惑ですよ……」
「ドジが一人減ったって大して支障はねぇよ。それに、あいつは別に良いみたいだぜ」
オムギはライトを指差す。
「俺!?」
「まぁ、色々役に立つから、バンバン使ってやってくれ」
なんだか、強引に事が進んだが、イネイはすでに諦めていた。
キャラクター命名秘話⑲ オムギ
全くひねりはございません。
「オ」+「麦」
次回は別の方です。




