第四部 怪奇な事
「あれ?帰って来たのか?あいつら、探しに行っちまったぞ」
コウは箒片手にやって来た。
「そうなん?なんや、悪いことしたなぁ」
コウは固定電話の受話器を持った。手慣れた手つきで番号を入力し、相手が出るのを待った。二、三回の繰り返しの後、相手が出た音がした。
「もしもし、コウだ。今帰って来たぜ。ああ、もうすぐ夕飯だしな」
スインはその間ソファに座り、自分の右手を見つめていた。すぐに、バァンと勢いよくドアが開け放たれ、少しすると、必死な顔のアインがやって来た。
「姉さん!」
あまりの大きな声にスインはビクッと体を揺らした。しかし、次の瞬間アインに抱きつかれていた。
「なんとも無くて、良かったぁ……」
本当は色々あったのだが、スインは何も言わずに抱き返した。
「ごめんな、迷惑かけたなぁ」
他のメンバーもゾロゾロ帰って来ると、コウが
「飯だぞー!」
と言った。皆はそうやっていつも通りの時間を過ごしたのだった。
その夜。オスコの小屋に、ある人物が訪ねて来た。
「誰かと思ったら、オエライサンか。こんな時間に外出して良いのか?」
「恐縮ですよ。王の側近は他にも多くいます」
ギルドだった。オスコはギルドの醸すオーラに気圧される事は一切なく、ソウマと話している時となんら変わらなかった。ただ、いつもより目つきが若干悪い気がする。
「待ち合わせてる人がいまして」
「勝手に待ち合わせ場所にされると困るんだけど」
「手紙を送ったはずです」
「そんなものは全て山羊の腹に収まってる」
とは言いつつも、きちんと湯を沸かして茶を出した。
「紅茶やら茶菓子なんて洒落たものはない。寝る前は麦茶かほうじ茶に限る」
ちなみに、出されているのはほうじ茶だ。オスコも自分で飲む。やがて、誰かがドアを開けた。
「来ましたね」
「ふふっ。用って何かしら、オマワリサン?」
チーナであった。
「警察なのか?」
「どちらかと言うとそちらの仕事が主ですね。任務もそこから選んでいます」
オスコはふーん、と興味なさげに答えると、
「外すぞ?」
と言った。
「良いんですよ。あなたは口が堅いでしょうし、大した話ではありません」
ギルドはくるりとチーナの方を向いた。
「いつ頃から自覚があったんですか?」
「先月くらいから。久しぶりね、キ、いやギルド。随分と良い目をする様になったじゃないか」
「入れ替われるんですね。レイさん」
「あくまで居候みたいな感じだけどね」
オスコは繰り広げられる会話からただならぬ雰囲気を感じ取っていた。




