第三部 ひとまず変えた事
パシュッと、静かに相手を撃った。
「おぉ、成程」
撃ったのは相手の足だった。相手は体勢を崩し、エムルは相手を蹴り飛ばした。
「手か足を狙って撃てば、殺しはしないけど戦意を無くさせるには丁度良いもんね。でも、全然容赦はしてないね。あの人次また立てる様になるか分からないよ?貫通しちゃってる訳だし」
「……難しい」
「それか、いっその事……」
エムルは相手に歩み寄るが、途中で立ち止まる。
「おっと。それじゃあ本末転倒なんだった」
エムルはスインを見る。しかし、すぐ右を向いた。
「やれやれ。やっぱり、そう簡単には出してくれないみたいだ」
ゾロゾロとやって来た相手に、エムルはうんざりしている様だった。
「こっからは流れ作業だ。さっさと片付けて、とっとと帰ろう」
スインはエムルがそう言っている間に二人倒した。
「わーお、流石だね」
エムルもそれに劣らない速度で倒して行く。結局、全く苦戦せずに倒してしまった。
「楽勝すぎるのもつまんなくて嫌かも」
エムルは口を尖らせた。スインはそのまま出て行こうとしていた。
「帰り道、知ってるの?スインちゃん」
スインは黙っていたが、連れて行ってもらう事にした。
「おんぶしてあげようか?」
「自分で歩く」
「僕の事嫌い?」
「嫌い……やないけど、なんとなく」
「じゃあ、こうしよう」
エムルはヒョイとスインをお姫様抱っこした。スインが戸惑う暇も無く、エムルは走り出した。真っ直ぐに森に入ると、崖に遭遇した。スインは回り道するだろうと思っていたが、エムルは躊躇う事なく飛び降りた。スインは大きな衝撃が襲って来るだろうと身構えていたが、エムルは背中を地面につけて跳ね返る様に起き上がった。
「びっくりした?これが僕の特殊能力なんだよ」
エムルは再び走り始める。今度は川があった。
「結構太いなぁ。仕方ない、こうしよう」
エムルは岩で橋を作った。
「上手やなぁ」
「鍵の方が大変だったよ。細か過ぎるし、ちょっとでも間違えればアウトだし」
エムルはずんずん進み、遂に見慣れた通りに辿り着いた。
「本音を言えば、もっとこうしてたかったよ。折角会えたんだし。まぁ、嫌われるのはごめんだしね」
エムルは何かを素早く書く。
「これ、僕の連絡先。きっと、割と早くにまた会えると思うよ。じゃあね、スインちゃん」
エムルはそのまま去って行った。スインは通りを歩き始める。やがて、フォニックス本拠地が見えて来た。
「みんな、心配かけたなぁ」
しかし、中にはコウしかいなかった。




