第二部 狙撃の迷い
「じゃあ、行くよ」
エムルは素早く七つの鍵を開けた。
「透明にしてくれない?」
エムルはスインの肩を掴んだ。スインは透明になった。
「いやー、楽ちん楽ちん」
他の者達とは別の道で進んだため、誰もおらず、尚且つ巻き添えをくらう事も無かった。
「でも、最強ではないで。あくまで隠せるのは姿と妖気だけやから」
「だよねー。だから、こういう事もあるわけだ」
エムルはスインを引き寄せ攻撃を避ける。攻撃の主はコウモリであった。
「そこにいる事は分かっているぞ」
「スインちゃん、これやめて。お互い自由に動けた方がいいでしょ?既に僕らがここにいるって事はバレちゃったんだし」
スインが言われた通りにすると、エムルは駆け出した。
(普段からライト君見とると遅く感じるなぁ……)
と思ってしまったようだが。スインは自分は透明のまま距離をとった。そして相手の頭を撃った。が、相手の頭を濡らしただけだった。その隙を狙ったエムルが倒したが、スインはまた落ち込む事となった。
「ありゃー、なるほどね」
エムルはスインをじっと見る。透明な筈なのに。
「少し前までの君なら、今頃あの人は殺されていただろうね。でも、迷いが、出来ちゃったんでしょ?」
スインは言葉に詰まった。
「敵だからという大義名分を持ってしても殺さず仲間にしようとする。殺してしまった事を心から後悔する。そんな彼らを見て、自分が変なんじゃないのかって、生まれて初めて思った筈だ」
スインはそのまま聞いているだけだった。
「だったら、探せば良い。殺さずに戦う方法を。きっと君は、もう戻れない筈だ。フォニックスにいる限りはね」
エムルは歩き出した。
「さ、行こうか。あんまり長くはいたく無いしね」
二人は再び透明になって進み始めた。スインの右手は忙しなく動いていた。
「おー、随分と出口に近付いて来たねー。まぁ、ここのボスとは戦わなきゃならないだろうけど」
エムルは躊躇いなくズンズン進んで行く。スインは若干不安になりながらも進んで行った。
「ほら、やっぱりね」
出口の真正面に、今までとは風格の違う者がいた。
「うわー、これは中々強そうだ。今のスインちゃんなら無理だったね」
「心配せんでも、もう決めたんや」
「……そう。じゃあ、信じるよ」
エムルは相手の真正面に立った。相手は雷を落として来た。
「これは一発でも当たったら即死だね」
エムルは軽い身のこなしで避けて行く。スインは一度深呼吸をし、相手を見詰めていつもの構えになった。




