第五部 普通の朝
「ふぁぁぁ。もう朝なんかぁ」
スインは翌日普通に起きた。十月の秋らしい天気だった。普段からふわふわしていてマイペースなスインだが、寝起きの髪も盛大にふわふわしていた。
「……」
本人も鏡でそれを確認した。試行錯誤の末になんとかいつものストレートに戻すと、すぐに着替えて部屋を出る。脱いだものはコウに渡したり自分たちで洗ったりしている。
「姉さん、おはよう」
「おはよう」
アインも丁度出て来、いつも通り二人一緒に降りて行く。すると、リビングには両手で抱えて持つ程の大きさの箱がリビングの机を陣取っており、ソウマがカッターを持って来ている所だった。
「おはよう、スインさん、アインちゃん」
「「おはよう」」
「それ、なんなん?」
「ヒノガさんからだって」
ソウマがそう言いながら開けると、ダンボールの中にはぎっしりとハツカダイコンが入っていた。
「ラディッシュやな」
「スインさんはそっちで呼ぶんだね」
「なんだ?」
コウがひょっこり出て来ると同時に、フウワも降りて来た。
「みんな早いな」
「お!ハツカダイコンだな!」
「なんの話だ?」
「ヒノガからラディッシュが届いたの」
「ハツカダイコンの花言葉は『誠実』だよ」
「ヒノガって、そんな感じがするかも」
「アインは実際に戦った事あるもんなぁ」
「とりあえず、これ持ってっていいか?」
「いいよ」
コウは厨房へ向かった。
「私はライトを起こしに行って来る」
「エント君もおらへんよ?」
「エント君は今特訓中だよ」
「珍しい事もあったもんだ」
フウワは上がって行った。
「『俺はもっと強くなる!』って言ってた」
「急にどうしたんだろう?」
「でも、もうすぐご飯だから呼んで来ようと思う」
「そやなぁ。私たちはお手伝いでもしよか」
「そうだね」
しかし、二人が着く頃には全て終わっていた。
「まー、昨日は朝飯食って無かったし、ゆっくりしろよ」
「いってぇ!」
聞こえたライトの声に、三人は呆れるしか無かった。
「……ライトはなんでこうなると分かってても起きようとしないんだ?」
「確かに」
そんな他愛も無い話をしていると、
「みんなー!」
と大声が聞こえた。驚いて玄関へ行くと、パキラがいた。
「ちゃんと届いてた?ハツカダイコン」
「ああ、うん」
「良かった。ヒノガったら、粋な事しちゃってさ。じゃあね!」
パキラは一瞬で去って行った。
「なんでわざわざ来たんだろうな?」
「多分、ヒノガがこれを私たち送った事を面白がってるんじゃないかな?」
それは、普通の朝だった。




