表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/185

第四部 ひとつの願い

 (……仕方ない、死んだら元も子も無いからな)

ソウマは駆け出し、ハエトリソウを出した。相手はガードを張った。しかし、次の瞬間背後から技を受けていた。

「一体何が……」

ソウマの目は赤かった。

「すげぇ……ハエトリソウを足場にして相手のガードを跳び越えやがった……」

遠くから見ていたフウワはただ感心していた。

「これで、もう動け無いだろ?」

敵は倒れ込んだ。

「この一撃を決めさせてくれたお礼はしておく。だが、いつまでもこの体の所有権を握っていられると思うなよ」

ソウマの目は灰色になった。

「……ふぅ」

「ソウマ!大丈夫だったか?」

「うん。それより、迷惑かけてごめんね」

「全くだ」

オスコが会話に割り込んで来た。

「あれ?ロル君は?」

ロルは、狼の名前である。

「どっか行った。あいつ急に消えて気付いたら帰って来てんだよ」

その時、茂みが揺れ、狼が顔を出した。

「ロル君、久しぶり」

「ウォウ」

ロルは大人しくソウマに撫でられている。

「私にはブラッシングすらさせないくせに」

「ロル君は本当にソウマさんが好きなんでしょうね」

イネイがライオンに若干驚きながらもそう言った。

「おーい!いるかー?」

ライトが駆け寄って来た。

「なんでここだと分かったんだ?」

フウワは首を傾げた。

「なんとなく、ソウマは必死に護りたい場所はここだろうなって」

「……お前、こういう時だけ無駄にかっこいいよな」

「いつもとそんなに変わらねぇよ?あと無駄にって何?」

「兄者ー!」

「あ、みんな来た」

他の皆も息を切らしながらやって来た。

「ごめん、また迷惑かけた」

ソウマは頭を下げたが、皆はいーのいーの、という感じであった。

「ソウマ君はいっつも頑張っとるし」

「どこぞの誰々さんと違ってな」

ライトとエントが目を逸らした。

「そそ、困った時はお互い様でしょ?」

アインがそう言うと、オスコは

「同じ氷属性でこうも性格が違う事があるのか?」

と誰にも聞こえない様に呟いていた。

「さぁ、帰るぞー」

ライトは歩き出した。それにつられる様に、他の者も歩き出す。オスコは彼らが見えなくなるまで手を振っていた。


 「とっとと飯食うぞ」

コウがテーブルに料理を並べる間に、皆は洗面器に押しかけた。

「一時はどうなる事かと思ったぜ」

こうしてソウマが無事に帰って来た事を何よりも喜んでいるコウだった。

「飯だー!」

「廊下走んな!」

そして、いつものフウワの打撃に撃沈する兄弟であった。

(こんな日常が、ずっと続いて行きますように)

それは、小さい様で大きな願いであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ