第五部 妖石
アインは、ギーヨに連れ出されていた。瞬間移動で来た建物は、意外にも狐の国の宮殿だった。
「何故猫の国では無いんですか?」
「あなたと同じ突然変異の方がいらっしゃるので」
アインはギーヨを見上げていた。ギーヨは、何食わぬ顔で歩いている様に見せかけて、
(アインさん。無自覚なのだとは思いますが少々距離が近過ぎやしませんか。僕は嬉しいですが、変な人に目を付けられてしまいますよ?)
と随分困惑していた。
「お待ちしておりました」
宮殿に足を踏み入れると、執事が挨拶と案内をして来た。案内された部屋には、
「久しぶりぶりですね、ストキ様」
「随分と大きくなりましたね、ギーヨ」
ストキと呼ばれた男がいた。
「あなたがアインさんですね。話は聞いています」
ストキは立ち上がり、棚から両手にすっぽり入る程の大きさの箱を出して来た。ストキがそれを開けると、黄色く輝く玉が入っていた。
「アインさん。これは“妖石”というものです。主な特性として、意思によって妖力が出し入れ出来るというものがあります。これが出来るのは純粋な妖石だけです」
ギーヨがそう説明していくと、ストキは庭に出る様促した。全員が外に出ると、妖石が浮いて話し出した。
『今回の者は、今までのとは一味違う様だな』
そして、突然雷を落として来た。アインはそれをギリギリ避け、更に降って来たものも同様にした。
『あいつの後を継げるのはその息子だけだと思っていたが……お前の目は綺麗だ。純粋で実直な目をしている。人殺しにしてしまうのは少し惜しいな。力を貸してやるとするか』
妖石はアインの手元に落ちて来た。
「一度持ち主を持った妖石は相棒を選ぶようになるんですよ」
ストキはそう言ってネックレスを持って来る。妖石はネックレスの隙間に入った。
「大事にしてあげて下さい」
ストキは改めてアインに渡す。
「ありがとうございます」
アインはギーヨに帰して貰った。
ストキは部屋に戻って一息ついた。
「結局、ずっと隠れてましたね、キルラ」
ストキの向いた方向はドアだった。廊下に面している物では無く、部屋と部屋を繋ぐ物だった。
「……確かに、キルラのままでは外に出られません。しかし、クラキなら大丈夫だったんじゃ無いんですか?」
ストキの問いかけに答える者はいない。
「今日は、ご機嫌斜めの様ですね。それとも、ギルドと呼んだ方が、良かったですか?」
ストキはそれだけ言うと、部屋を出て夕飯を食べに食事室へと向かったのだった。




