第三部 暴走する二人
キョウは迷う事なく破片を飛ばす。しかし、一向に当たらない。
「当てるだけでもこんなに難しいのか…」
キョウが四苦八苦しているのを、少し離れた所でギーヨが見ていた。
「撃つ時に体がブレてます」
小さい声だったが、キョウには聞こえた。なぜなら、彼の特殊能力は“聴覚”だからだ。相手からの反撃を慌てて避け、うっかり放ってしまった破片が図らずも相手の足に突き刺さった。
「貴様……、戦った事無いんじゃ無かったのか」
相手はマトモに動く事が出来なくなった。キョウはトドメをさす。
(なんか、『攻撃を当てる』感覚が分かった気がする)
キョウは次の相手を見つけた。相手は素早く距離を詰めて来た。キョウは鏡で相手の攻撃を捌き、そのお陰で割れた鏡を至近距離で飛ばした。
(やはりキョウも王族ですね。戦いの感覚が、体に刻み込まれています。まさか、ここまで出来るとは思っていませんでした)
ギーヨは驚きながらキョウが次々と相手を倒して行くのを見ていた。
(キョウはもう大丈夫そうですね)
ギーヨはキョウから離れ、アインの所へと行った。アインは苦戦していた。
(助けるか?でも、こう言う時はそっとしておいた方が良いとも言うし……)
ギーヨが悶々としていると、急に気温が下がった。ギーヨが驚いて顔を上げると、アインが相手を氷漬けにしていた。その目は獣の様な、ギラギラとした光を放っていた。
(突然変異の暴走か……。アインさんでもあるんだな)
ギーヨはアインとの距離を一気に詰める。アインは容赦無くギーヨに攻撃して来る。事に気付いた皆は見ている事しか出来無かった。ギーヨは眩い光を一瞬出し、アインに目を閉じさせた。
「これでいい筈です」
再び目を開けると、アインはいつも通りになっていた。
「あれ?何してたんだっけ?」
しかも、記憶が無かった。
一方、ソウマは一人で強い相手と戦っていた。
「中々の耐久力だな。だが、いつまでも耐え続けられると思うなよ。お前らは一人残らず始末する」
「なんでそんなに固執するんだ」
「国を潰されて何も思わない方が不思議だろう」
「王のしてた事をなんとも思って無いのか」
「王は国を守る力を得る為実験に手を出したのだ」
「じゃあ、国を守る為なら誰がどうなってもいいって思ってるの?」
「必要な犠牲とてあるだろう」
ソウマの瞳が、赤く染まった。
「じゃあ、君もどうなったって良いんだよね?」
エントがソウマを見つけた時、目に飛び込んで来た光景を見て絶句してしまった。




