第五部 それぞれの再出発
「こんなに美味しいご飯を食べたのは何年前だっけ……」
パキラがそう言うと、同調する様に頷く者がいた。
「まだまだあるから食べてけよ」
コウが追加分を運んで来る。ちなみにツーハは自分の顔より大きい丼にご飯を貰ってご満悦だった。
「そう言えばさ」
ライトはアルガに話しかける。
「お前らって、これからどうるすんだ?」
その言葉に、皆が不思議そうにする。
「またあそこに戻るのかと思ったけど」
急にギーヨが現れる。
「いえ、今回の活躍を加味して釈放だそうです」
部屋がドッと騒がしくなる。
「そもそも、刑務所に入れる必要あったのか?特にパキラ」
「形上そうしとかないとうるさい奴らがいるんだろう」
フウワは座りながら答える。
「急に好きにしろと言われても困るんだが」
オスコはどちらにしろ不機嫌そうだった。
「だったらさ」
ソウマがオスコの座っていたテーブルに近づいた。
「今山に住んで、動物たちと一緒にいてくれないかな。都合のいい話だとは思うけど……」
オスコはソウマを一瞥すると、
「……山暮らしの方が静かで好きだ。まぁ、やってやらない事も無いだろう。その代わり、一ヶ月に一回は顔出せよ」
と目も合わせずに言った。
「ありがとう。詳しい事は準備が出来てから教えるね」
一方、ロスト団のメンバーはあまり悩んでいない様だった。
「義父さんツテがあるらしくって。だから私たちはそんなに困りはしないかなー」
「捕まっても頼れる人がいんのか?」
「事情を全て知っている奴だ」
ヒノガはそう言ったが、パキラの方へ行った。
「パキラはどうするつもりだ」
そう言って振り向いたパキラは、涙目で拗ねていた。ヒノガは訳が分からず硬直した。
「……ヒノガはみんなと行くんでしょ?」
「……」
黙ったヒノガをチーナとレイナがグイグイ押す。
「私はどちらでも良いですよ」
ナノガがそう言うと、ヒノガはパキラに近付いた。
「……俺自身にはツテなんて無いぞ」
「……猫の国に猛獣の住む森があって、そこは誰の土地でも無いみたい」
「……分かった」
ヒノガはそう言うとパキラと目線を合わせた。
「また、倒せば良いんだろ?」
「うん」
その様子を見て、チーナは
(お互い初心ね。男女二人で同棲かぁ。……伯母さんって呼ばれる日も、そう遠くは無いのかもしれないわね)
と思っていたのだった。もちろんレイナは違う事を考えていたが。
楽しかったパーティーの翌日、皆はそれぞれの道に向けて旅立って行った。
「また会いに行くからなー!」
彼らの進む道は、朝陽で照らされていた。




