第四部 引っ越しと最初の依頼
そのまま突き当たりにあった階段を使って二階へ上がると、大使館だからなのか個室が大量にあり、二階建てではあるがホテルの様だった。
「ここをみんなの部屋にするのが良さそうだな。階段の近くから使って行くか」
ライトの発言に一同は合意し、先に運んでおいてもらった荷物を自分の部屋に入れ始めた。部屋の家具はシャンデリアがあったが使いにくそうだからなのか人数分の照明も置いてあった。クローゼット、鏡、ベッドにテーブルと椅子というシンプルなもので、洗面台と風呂は男女別で共通だった。皆が感動する中、スインだけが
(掃除、大変そうやなぁ)
と割と現実的な事を考えていた。食堂のテーブルを二つくっけて他はしまったり、玄関と繋がっているとにかく広いホールにテレビやらゲーム機やらをおいたりして着々と引っ越しを進めていった。使わない部屋も数多くあったが、とりあえずひと段落した所でエントの腹の虫が鳴った。みんなは呆れつつも空腹なのは同じだったので、最寄りのスーパーへ行った。
「二人はパン食なんだな」
迷わずサンドウィッチをカゴに放り込む姉妹を見たライトが言う。
「ご飯も美味しいんだけど、私たちはパン派かな」
「フウワ食い過ぎじゃねぇの?太らないか?」
割と沢山の物をカゴに入れていたフウワにエントがそう言うと、もれなくフウワの拳骨が飛んで来た。店では流石に埋めることは無かったが、エントは殴られた所を痛そうに摩っていた。
「これは日用品だ!言葉使いに気を付けろ!」
ライトが笑うので、余計エントは不機嫌そうにする。スインはそのやり取りすら微笑ましく見守っていた。アインは呆れていたが。そんなこんなで買い物を終えて昼食をとっていると、またギルドが現れた。怪しい笑みを浮かべながら。エントを除く全員が悟ってしまった。
「皆さん、お引っ越しは完了しましたよね?この通り、初めての依頼が来ております。是非是非、ご遂行下さい」
敬語なのに有無を言わさぬ迫力があり、一同は半ば強制的に任務を受ける事となった。和気藹々と時間は終了である。ライトがギルドの持っていた手紙を受け取ると、ギルドはまた消えた。ライトがそれを読み上げる。
「『拝啓 戦闘集団フォニックス様
始動間も無くの依頼失礼致します。この度は、急に姿を消した息子の安否を確かめて頂きたく、依頼させて頂きました。調べた結果この頃動物の気性が荒くなったと噂の今山にいるという事です。心配でたまりません。どうかよろしくお願い致します。』」
キャラクター命名秘話③ スイン
スインも分かりやすいですね。
「水」+「ン」
次はアインの予定です。