プロローグ 驚きの任務
八月。街全体が夏祭りの準備に勤しんでいる中、一同は珍しく全員が真面目な顔をしていた。ギルドのある話を聞いたからだ。
「『国を潰せ』って……いくらなんでも、出来るとは思えないぞ……」
ライトが沈黙を打ち破る様にそう言うと、ギルドはライトを見る。
「国と言っても、村のような小国です。しかし、哺乳類だけが人として暮らして来たこの世界で、蛇の国が出来るとは。不思議な事もあるのですね」
「それは、正しい事なのか?」
エントは躊躇いがちに尋ねる。
「別に私たちは蛇を滅ぼそうとしている訳ではありません。ただ、その王が怪しい実験をしている様でして。それを止めて頂きたいのです」
ギルドは真っ直ぐな眼差しで告げた。それを見たライトは動き始めた。
「ギルド様、それ以上は要りません。ただ、今までの奴ら全員貸してくれませんか?」
「……まぁ、いいでしょう。ピンチになったらすぐに鼠の国に助けを求める様にして下さい。話は通してありますので」
ギルドはそれだけ言うと消えてしまった。
「移動どうすんだ?」
エントがそう言っている間に、ギーヨが現れた。
「今回は僕が送ります。本当はお手伝いしたいのですが、仕事が溜まってしまっていて」
「いえ、送って頂けるだけでもありがたいです!」
アインがそう言うと、ギーヨは尻尾を一往復振り、
「準備は出来ましたか?では、今まで戦って来た方々と合流しましょう」
皆が頷くと、ギーヨは瞬間移動をした。
そこは刑務所の前であり、一同は一瞬たじろいだ。しかし、すぐ気を取り直し、出て来る者たちを見た。
「なんで俺がこんな事しなくちゃならないんだよ」
と不満気に言ったアルガに、ヒノガの鋭い打撃が降りかかった。
「阿呆。弱い者は強い者に従うのが世の中の道理だ。俺たちに発言権は無い」
「まぁまぁ。せめてもの罪滅ぼしって思っとけばいいんじゃない?ね、ヒノガ」
パキラが間に入ってヒノガにウインクすると、ヒノガは目を逸らした。
「……やる事には変わり無い」
(パキラってこんな感じの人だったのか?)
その様子を見ていたライトはそう思ったが、声には出さなかった。全員が出て来ると、ギーヨは手を叩いた。
「確かに元々は相手。思う所もあるでしょう。しかし今回ばかりは協力する様に。でないと、全滅しますよ」
最後だけ低い声であった。一同はしんと静まり返った。
「では、送りますよ」
到着した蛇の国は、高い壁に囲まれて入るものの、まるで一つの街であった。一同は気合を入れ直した。
「………け…………」
キャラクター設定⑰ イネイ
イネイはうっかりさんをイメージしました。改訂版でもぜひ活躍させていきたいです。
次回は未定です。




