第二部 うっかり
彼女は最後の悪あがきかソウマに氷の礫を飛ばし続けた。ソウマの体が穴だらけになってしまいそうだったが、何故かよろけもしなかった。そして、ソウマは彼女の目前まで迫り、右手で剣を振り上げた。しかし、左手で彼女の首あたりをトンっと手を横にして叩き、気絶させた。
「その剣、いったのか?」
エントはソウマが剣を妖気へ戻しているのを見てそう言うと、ソウマはエントを見て、
「相手に注意を右手に向けたかったからね」
と言った。氷は溶けて、普通に歩ける様になると、ズカズカとフウワがやって来ていつもの如くソウマを怒鳴……るのかと思いきや、突然泣き出した。ソウマはどうしていいかわからずあたふたした。フウワはしゃくり上げながら話す。
「あんだけ言っといて、結局、私は、ソウマの、無茶に、守られた!」
フウワはしゃがみ込み、ソウマは見下ろしながら困っていた。
「不安で仕方ないんだよ!ソウマが無茶する度!でも、でも、私が弱かったら、ソウマに無茶させちゃうじゃんか!」
ソウマはフウワを優しく抱き寄せ、頭を撫でた。
「フウワさんは弱くないよ。僕が怪我する様な戦い方をしただけだし。本当なら、フウワさんは自分でも吹雪や氷の礫を防げたんだと思う。でも、護りたいって、勝手なエゴが出て来ちゃってさ」
フウワは上目遣いでソウマを見る。
「いつもみたいに、叱ってくれていいんだよ」
フウワの目が驚きで小さくなった。
「二人とも何してんだ?」
彼女を警察署に運ぶに行っていたエントは、何気なくそう言った。二人は目が覚めた様に自らの状況を確認し、真っ赤になった。ソウマは勢いよく離れた。
「ご、ごめん!つい、勢いというか、雰囲気というか……」
「べ、別に、大丈夫だ。無意識なら、仕方、無いしな」
エントは首を傾げた。
「依頼終わったし、帰るか?」
その言葉に二人は何度も頷く。エントは
(なんか変じゃね?)
とは思ったものの、持ち前の呑気さで忘れてしまった。
本拠地に戻ると、既に一方の三人は帰って来ていた。三人は心配や興味で色々声をかけてくる。
「ソウマ、血が出てないか?病院行った方がいいと思うぞ」
「フウワさん、顔が赤いけどどうかしたの?」
「ソウマ君、えらい疲れとるみたいやけど」
その質問に二人は空返事であった。エントとコウは同じ様に首を傾げていた。
「……とりあえず、病院行って来るね」
とソウマが行こうとしたが、ヨロヨロと歩いて倒れてしまった。既に、限界を超えてしまっていたソウマだった。
キャラクター設定⑬ ギーヨ
ギーヨは本来落ち着いた一国の王をイメージしていたのですが、なんだか捻りが無いと設定を付け足しました。
結果、常識人ではなくなってしまいました。
次回はまたこれです。




