第三部 集合
「すまんって。お前強いんだな!こんなに早かったって事はそうだろ?」
「強いも何も、あんな雑魚技無しでも倒せるわ」
アインは心底驚いた様な表情を見せていた。そんなフウワにスインは穏やかな笑みを浮かべたまま近づく。
「これから仲良しよな。フウちゃんって呼んでええ?」
「……勝手にしろ」
そっぽを向いたフウワにエントが突っかかる。
「嘘つけ、嬉しいくせに」
フウワの拳骨が今度こそ落ちる。エントは地面に埋まって土竜の様になってライトに笑われた。エントは心底悔しそうにしていたが、ライトは携帯で写真を撮った。
「おい!消せ!」
ライトは素早く携帯を仕舞う。そんな様子を見たアインが思わず吹き出す。
「そんな事よりまだなのか?こんな朝早くに呼び出しておいて自分が遅れたらぶっ飛ばすぞ?」
現在時刻午前七時二十八分。集合時間は三十分であった。先程からずっと怒っている様に見えるフウワだが、これが平常運転だと思って貰っても差し支えない。それに対してスインは穏やかだった。
「でも、あと二分あるし、瞬間移動持ちさんかもしれやんで?」
そう、この世界には瞬間移動が出来るものが割と多くいるのだ。だから、来る気配が無くても大丈夫である可能性もあるのだ。そうしている間にやはり瞬間移動で男が現れた。男とは言えども身長も顔立ちも男物のスーツを着ているから性別が分かったくらいに中性的で、藍色の目、耳と尻尾は帽子と服で隠れてしまっているが黒寄りの茶髪でストレートだった。
「本日はお集まり頂き感謝します。私は王の側近ギルドです。詳しい説明は資料をご覧下さい。用事があるので私はこれで。期待していますよ、フォニックス」
ギルドはまた瞬間移動をして消えた。フウワでも文句を言えない程の風格を持った人であった。
「名前の最初に『ギ』が付いてるって事は王族だよな……?」
王族。それは国を統べる家系であり、その証としてキとギが名前の最初か最後に付いている。皆がおののいている間にスインは普通に大きな木のドアを開けて入ろうとしていた。皆も慌ててそれに付いて行く。まず玄関から玄関と呼んでいいのか分からない程違った。部屋そのものが十人横に並べる程大きく、家具や装飾も豪華だった。驚きながら赤い絨毯の敷いてある通路を歩いて玄関に置いてあった奥に進むと、食堂程の広さとテーブルの数がある食事室と、それに隣接した一流のシェフが使いそうな厨房があった。一同は最早何も言えなかった。
キャラクター命名秘話② エント
エントは兄であるライトに似て安直です。
「炎」+「ト」
主要キャラクターは覚えやすい様にあえて簡単にしてみました。
本作をよろしくお願い致します。