第三部 驚き二回
中に居たのは依頼通り火鼠の女だったが、問題はそこでは無い。彼女の視線は上の空で、心ここに在らずといった様子だった。
「操られてる…… のか?」
ライトがそう言うとアインは同意した。
「多分ね。こんな事、正気だったら出来てないだろうし」
二人が観察している中、スインはマイペースさがそうさせているのか一人攻撃を仕掛けた。しかし、火の玉で打ち消されてしまう。彼女の虚げな目がスインを捉える。スインは急いで透明になる。しかし。
「姉さん!」
アインが駆け付けた頃には既にスインに火の玉が直撃していた。スインは自分に到達する直前に打ち消していたので実際には当たっていないのだが、アインはかなり心配していた。
「二人は下がってろ。俺が一気に近付いてみる」
「危険だし、姉さんみたいに消せる訳じゃないんだから当たった時大火傷になっちゃうよ?」
ライトの提案を却下しようとするアインだったが、ライトはやけに自信満々だった。
「アインの言いたい事も分かるけど、俺は大丈夫だ。ギーヨ様に感謝だな」
ライトはそのまま突っ込んでいった。常人離れしたスピードでグングン彼女との距離を縮めて行く。当然彼女は大量の火の玉で応戦した。しかし、ライトは横に動いたり跳んだり屈んだりして全て避けた。
「ライトさんって、あんなに凄かったっけ……?」
「それはライト君に失礼やで、アイン」
そんな姉妹のやり取りを他所に、ライトは雷で玉を作って飛ばした。だが、威力と正確さに欠けていた様で、途中で地面に落ちてしまう。それでもライトは続けた。そうしている内に、彼女の放った火の玉がライトに掠った。火は掠っただけでも燃え移る。
「ライトさん!」
アインは必死に走り始めるが、ライトは水を発生させて消してしまった。アインは急ブレーキをかけた車の様に止まった。
「ライトさんが、水を!?」
ライトは誇らしげな笑みを見せた。
「ギーヨ様に本貰っただろ?あの本に、妖力は普通より多く消費するけど他属性の技も使えなくは無い、って書いてあったんだ。案外、出来るもんなんだな」
アインは溜息を一つついた。ライトは急に戻って来た。
「スイン、ビームみたいに水出して相手に当てれないか?一瞬だけでいいから」
「……そんなに妖力残ってないわ」
スインは申し訳なさそうに言う。ライトは何か返事をしようとしたが、誰かの声で遮られた。
「パキラ!」
それは彼女の名前の様だった。そして、現れた人物はなんとヒノガであったのだった。
キャラクター命名秘話⑱ パキラ
パキラはパキラです。語彙力無くてすみません。
「パキラ(植物の名前)」
次回は違う方です。




